第3話 僕は…どうしたら……
「それも、教えていただけませんか?」
フィアの言葉にレイは恋人のことを伝えるかどうか迷ってしまう。
今までのフィアであったならレイはすぐ恋人のことを打ち明けて、悩んでいることの相談でもしていたことだろう。
だが、今は違う。乾いた笑い、レイしか写らない暗い瞳に加えて、何とも言えないがレイには『言ってはいけない』ということが本能的にわかった。
「……僕がそれを言って、フィアはどうするの?」
一見、相手の状況を確かめるための普通の質問。
だが、この場において、ついにはフィアに対してこの質問は抑えていた感情をあふれ出すためのトリガーであった。
「それは……」
「私とレイ様の愛を邪魔した愚か者は殺すに決まっているでしょう?」
「……!!!」
レイは今までに感じたことのないぞっとする恐怖を感じる。
「だって、その人が居なくなったらレイ様は私を愛してくれるのでしょう?」
「だから、私に教えてください。その女のことを」
「私たちの愛のために」
フィアが言うことはすべて道理も倫理もなにもかもが破綻していて、レイはそれにおびえて言葉を紡ぐことができなかった。
それでもレイは自身の愛する人を守るために目の前の狂気に立ち向かった。
「フィア」
「はい何でしょうか?レイ様」
「僕の恋はその人が最初で最後だから、君を愛することはできない」
「だから、フィア
「言わないで!!」
レイの言葉を遮るようにしてフィアは叫ぶように下を向く。
「私の愛を、否定しないで……」
そこで、フィアの声に反応した他のメイドとレイの母であるセラが廊下から部屋に入ってきて泣いたフィアを連れて廊下に出ていった。
その後、残されたレイは部屋の中で一人、これからのことについて思い、深く悩んでいた。
「どうしたら、よかったのかな……」
あの後、フィアは夕食の時間になっても自分の部屋から出てくることはなかった。
他のメイドに聞いても、『今は、そっとしておいてあげてください』としか言われず、部屋の中で悩んでも何も解決することはなかった。
だからか、レイは眠気もない時間にベッドに入り無理やり寝ることにした。
夜も深くなってきたころ、レイの部屋のドアがガチャリと開く。
「ふふ、寝顔もかっこいい……」
入ってきた女は月の光に照らされた、レイの顔をなでるように触れて静かに何かをつぶやく。
レイ自身はフィアのことで疲れていたのかベッドの中に入り込んだ女に築くことは全くない。
「フィアの後は僕を娶ってほしかったのに……」
「僕たち以外のメスに最初に思いを寄せるなんてレイ様は悪い人だね?」
「……ぅん、ラティ……」
深い眠りの中にいるはずのレイが何かを口に出したのを女は聞き逃さなかった。
そして、女は忘れないようにその忌々しい名前をつぶやいた。
「ラティ、ね」
最後にその女はにやりと笑った後、レイの唇を濡らしてその部屋から出ていった。
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