第14話 気まずい感じ





 翌日、いつもと同じようにフィアに起こされたレイは朝食を取り終えてミアの用意した鞄をもって学園に向かう。

 昨日、レイが寝ているうちに壇上で話していたことをフィアから聞いてみると、入学式の翌日ということで、上級生の活動や学園の主要な施設を見て回ることが主に今日の予定ということだった。

 と、ここまで聞いてレイは昨日あまり寝れていなかったこともあってか、話の途中でフィアの肩に頭をのせて寝てしまった。

 それを見たフィアは、レイの頭を自分の肩から膝の上に移動させ優しく微笑んだ。


「……ふふ」










「レイ様、レイ様……起きてください」


「……ぇ」


 フィアの声で目を覚ましたレイはすぐに自分が寝てしまっていたことに気が付いて、フィアの膝の上からゆっくり体を起こした。


「あ…ごめん、フィア」


「いえいえ、朝も早いですし仕方ありません」


 馬車の窓から、外を見てみるともう学園の近くのことを確認したレイは御者に言ってフィアとともに馬車から降りて、隣に並んで教室に歩いていった。

 教室に着くと、中には昨日と同じで数人の生徒が来ているだけだったが昨日と違う点を挙げるともうすでにグループ的なものが出来上がっているということくらいだろうか。

 

「昨日と同じ席でいいかな」


「はい!!」


 そう言って、レイとフィアは教室の前の方に座ってラトが来るのを待った。





 レイたちが待ち始めてから、五分もすると教室の席はほとんど埋まり、その後すぐにラトが入ってきてホームルームが始まった。


「おはよう。今日の予定は昨日あらかた話したと思うが一応、話しておくと施設の見学とか色々だな。まあ、お前らのメインは授業見学だろうが他のとこも見てみると面白いから見て回るといい」


「っと、もう時間か。後は自由に行っていいぞ~」


 その言葉にクラスメイト達が各々荷物をもって移動を開始するのを見て、レイも同じように移動しようと立ち上がると後ろからノルに呼び止められた。


「レイ、ちょっと待って!」


「…あ、ノル。おはよう」


「…おはようございます、ノル様」


 レイはいつも通りに、一方でフィアは顔には見せないが少し面倒くさそうに挨拶を返した。

 するとノルはレイとフィアの近くに来て自分の荷物をもったまま話始めた。


「レイ、今日の見学なんだけどさ僕も一緒についていってもいいかな?」


「……」

 

 レイは昨日のことが頭をよぎり、いつもなら『一緒に行くか』と即答するところを少し言葉に詰まった。

 その時、レイの視線が隣にいるフィアの方に向いたのを見たノルは何も言わずにフィアのことをじっと睨みつけた。

 

「もちろんです!一緒に行きましょう」


 そう言って、一見快くその誘いに承諾したフィアは鞄をもって歩いていく。

 そして、そのフィアについていくようにノルとレイがドアから出てフィアの後ろをついていった。

 そうして、少し気まずい雰囲気に包まれて学内見学は始まった。





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