第12話 何かあったか?

 


「レイ?」


「ちょっとだけだから、行ってきてもいい?」


 フィアは腫れた目元をレイの方に向けてじっと見つめる。

 レイはラトが何を聞こうとしているのかはわからないが、わざわざ二人で話そうとしているところを見てフィアには聞かせない方がいいと思った。

 

「少し、だよ?」


「うん、わかってる」


 レイはフィアの目を見つめて軽く一言を言ってからラトの横を歩いていった。


「よし、じゃあ行くか」






 そう言ってラトがレイを連れて行ったのは大講堂の近くにある保健室だった。

 保健室の中はだれもおらず、静かだった。

 ラトはその部屋に入ると、いつもの豪快に笑ういつもとは違って不安そうな顔をしながらレイの方を向いた。


「フィア嬢がお前のとこでメイドをしているのは知ってるが……」


「何かあったか?」


 ラトが感じていたのは、違和感だった。

 レイはもともと、それほど傲慢な貴族という感じでもやんちゃな生徒という感じでもなかったがラトのような教師相手にも自分の意見をはっきり言う生徒で、少なくとも学園内で気を使いながら話をするようなタイプではなかった。

 しかし、一か月ぶりにあったレイはどこかフィアと話すときだけは何かを気にしながら話していた。

 それがラトにはどうしようもなく気になってこうしてレイを呼び出したのだった。


「実は……」

 

 レイはいきなりそう聞かれたことに驚いたものの、付き合いの長いラトに隠しておくのは無理だと悟って話すことにした。

 レイはそこから休暇中にあった見合いのこと、フィアのこと、を時間を気にしながらではあるため、省きながらにはなるが話していった。

 そうして、全部を聞き終えたラトは大きく息をついた。


「……なるほどな」


「レイ、フィアに何かあったらすぐに私に言え」


「いいか?何でもだ」


 念を押すようにラトは何度もレイに詰め寄る。


「はい…わかり、ました……。」


 レイはラトの迫力のある言葉に言葉を詰まらせながらも、信頼できる先生の言葉をそのまま信じることにした。











=======================


更新が遅れてすいません。

追記 最後の方を消しました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る