メイドたちの愛憎劇
@belbera
第1話 お見合い相手は知ってる人
「お父様、お母様。お話とは何でしょうか?」
この家の長男であるレイ・スタットは成人となる15歳の誕生日の夜、両親に呼ばれ緊張を張り詰めて部屋の中に入ると、レイの両親とレイ専属のメイドであるフィアが対面する形で座って待っていた。
「まあ、とりあえず座りなさい」
「そうよ、心配しなくても悪い話じゃないわ」
「わかりました」
そう言われて、レイは緊張感を持ったままフィアの横に座る。
「それでだな、レイ。今日、お前を呼んだのはお前の婚約についてだ」
その言葉にレイは少しだけ肩の力を抜いたが、またすぐ別の緊張を感じたようだった。
「婚約……」
貴族社会において婚約とは大体早めに行われるもののため、中には生まれた瞬間から両親によって婚約相手がほぼ決まっている人もいる中で、レイは未だ一度も見合いをしたことがなかった。
「そうだ。お前ももう成人になっていずれは俺の後を継ぐことになるだろう。そうなれば必然とその後継が必要となってくるのも…わかるだろう?」
「はい。それはもちろんわかってはいますが……」
レイの歯切りが悪い理由は、両親に言ってないだけで恋人はいるからだった。
そして言えない理由というのが、その恋人が平民であるため自分が一人前にならなければ父に婚約を認められないと思っていたからだ。
レイの身分は辺境伯の次期当主。ただでさえ国の中でも上の方の身分であるにもかかわらず今までこういったことを言ってこられなかった理由はただ単に両親の眼鏡にかなう人がいなかったというだけで実際にも誘いはずっと来ていた。
「それで、だ。急にはなるが明後日、ここで相手の方と会ってそこでレイには決めてほしい」
こういう時、ほとんどの場合においてはもう婚約が決まっている場合が多く形だけだからレイは本当はこうなる前に両親に紹介を済ませておくべきだったのだ。
しかしこうなってしまった以上、相手に会わずにさよならとはいかないのもまた事実だった。
「一応、言っておくが本当に嫌なら断ってくれて構わないからよく考えて決めてくれ」
「レイ、結婚はほんとに大事なことだからよく考えるのよ?」
「わかりました……」
それだけ言って、レイは部屋から出ていった。
その後、残った三人の中には微妙な空気が漂っている。
実際、こういうものは賭けのようなもので当事者たちが絶対に幸せになるとは限らないために王都の貴族たちから多くの申込書を送られようともそれを受けようとはしなかった。
けれども、そろそろ見合いの一つでもしなければならないと思ったレイの両親は今回のことを行ったのだった。
「レイ……あんまり乗り気じゃなかったな……」
「そうね…」
レイの両親はそろって不安そうだったが、一番それが如実に表れていたのはメイドのフィアだった。
「まさか、レイ様にはもう恋人が……?いや、そんなはずは……?」
「フィア。私たちが言ったようにレイが断ったならこの話はそれで終わりだ」
「はい、もちろんです旦那様」
全く平静を保ててはなかったが、一応の平静を保とうとした声でそう答える
「フィアも、準備があるんだろう?明日からは休みにしておくから今日はもう休むといい」
「ありがとうございます。旦那様。では私はこれで失礼いたします」
「私たちも寝るとしましょう」
「ああそうだな」
そうして、二人は眠りについた。
レイの幸せを祈りながら。
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