第14話 ニートになる1

私はニートになった。

令和4年の12月、職場でのアレコレを本社の組合代表に打ち明けると、翌年1月には本社人事部が動き出した。結論は千葉への転勤であった。


 相談をした時の代表は穏やかな表情をしていた。「私も乙仲を経験したからわかる。」と言うのが話を聞き終えた彼の第一声だった。現場の状況を理解しているらしく、思わずもしかしたらこの人も私と同じように精神的に参っていた時期があったのかもしれないと考えてしまった。


 2月、係長と課長に呼び出され、千葉への転勤を言い渡された。この時の2人の心情は表情からは想像ができなかった。元々何があっても期待はしていなかったが、会社に対する不信感が追加された瞬間だった。彼らの慣れたような作った態度は正直気に食わない。人1人満足に育成できなかったことをどう思っているのか。毎年毎年同じ理由で休職者や退職者を出す現場で彼らは何を改善してきていたのか。おそらく答えは出ないだろう。


 そんなことを考えながらいると突然机に置いたケータイに着信が入った。電話主はお世話になっていた外資系のエージェントである。話を終えてかけ直すと彼は「君からかけてきたから掛け直したんだ。」と電話口に答えた。

私はかけていない。

ならばこれは天からのメッセージではないだろうか。彼らについて続けというお告げではないか。

母親に連絡をとり、事情を説明すると「明日にでも退職届を出しなさい。」と言ってくれた。正直この時、重い鎖が切れたように感じた。呑み友Aに一応相談すると同じ回答が返ってきた。「Time to goだよ。」ラインが来た。A氏は日系人である。


 面白いことに同じような話を他の呑み友に伝えると、「これはチャンスだよ。」と言った。新天地でキャリアを再構築し起死回生を狙え、と言うことらしい。私も一瞬そう考えたが、思い描いたキャリアから遠く離れ、加害者を守ろうとする体制に会社として、組織としてついていけないと思っていた。呑気なことに会社の連中は次の日までに住居を決めておくようにとパンフレットを渡してきた。千葉にいる同期からはいつから来るのか、と言う連絡を受け少し心が痛んだが、彼女に考えを述べる前に自分の意見を言わなければならない相手がいる。


 私は人事部宛にメールを送信した。

件名は「退職のご相談」である。

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