第8話 人を振り見て我が身を直せ

 なぜこの業界は人気がないのか。物流業界は従来3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれ、多くの新卒社員からは入社を懸念されてきた。忘れてはならないのがブラック、パワハラ、低賃金の三つもついてくる。これは特にこの業界に限った話ではないが、まだ根強く残っている世間の印象だろう。

事実そうである。ブラックに近く職場環境が悪い、昭和の価値観は現代ではパワハラに該当することを理解されておらず離職者が多い、そして全てを体験したものは賃金の低さに将来性を見出せず絶望する。100人以上いた同期は5年目になると約半数がいなくなっている。その多くはブラック、パワハラ、低賃金の3段突きをモロに食らったもの達だ。


 私が入社した時、既に会社は脱ブラック企業を目指しており、長時間労働や賃金未払いを解決しようと動き出していた。残業時間100,200超えを無にしたりといったケースは徐々になくなったというが、それでは先輩方の苦労は報われない。それが新たな火種を産むことになってしまった。

自分たちが耐えた苦行はなんだったのかと言わんばかりの態度を当てつけ、上司達はかわいい部下が指導をしているものとみなして間に入ってこない。残業時間の削減は就業時間を圧迫し、ストレスフルな環境を作り出し、対人関係でギスギスしたものにしてしまった。教育や改善などにさける時間や労働力も少なく、耐え切れず愛想を尽かす人員が後を立たなかった。

ブラックの連鎖はまだ続くように見て取れた。人が去り、少しづつ浄化されていくその過程を見ると、我々は会社をよりクリーンな方向へ持っていくためのコマにしか思えなかった。問題が露呈し、解決する時、それは一つの社会人人生が路頭に迷うに等しい出来事だ。

なんのために働いているのか。次世代の環境を整えるための生贄なのだろうか。

ふざけるな。他人より自分である。そう指導してくれたのは現場にいる先輩たちではないか。口では仲間を大事にすると言っても結局は自己保身だ。そもそも大事にする企業はそこをスローガンに加えない。盲点であった。


次はパワハラについて自分の過去を掘り下げてみようと思う。

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