第18話 エピローグ 1

 最悪な最後を身をもって味わったが、まだ職場に私はいる。息も絶え絶えに終わらない作業に立ち向かうために残っていた別チームの男性2人に別れの挨拶をしに行った。

1人は若く、もう1人は年配でどちらも眼鏡をかけている。若手の方は育休で不在の人間の引継ぎがうまく行っていないらしく、年末では缶ビールを片手に血眼になってパソコンを向かい合っていた。

私が「お疲れ様です。今日で最後です。今までありがとうございました。」というと彼らは目を丸めた。

「今日が最後って聞いてないよ。」

「係長から挨拶なかったでしょ。」

立て続けに声を上げる。

「へへへ、忘れてたみたいです。」

故意か無意識かは係長にしかわからない。しかしそれはあり得ない。でもあの係長ならやりかねる、という事だ。

年配の方が「飯食いに行くか。」と提案してきた。よかった。悪い思い出のまま終わらずにすみそうだ。

3人で向かったのは深夜の日高屋だ。コロナの影響か以前ほど遅くまで開いている店はなかった。この日高屋も1時には閉店する。ガッツリとは食べず、小皿を頼んでビールを流し込んだ。

どんな話をしたか覚えていないが、楽しかった。改めて自己紹介した記憶がある。経歴と趣味ややってきたことを言うと、「君面白いね。」と言ってくれた。

「残念だなあ。なんで最後の最後でこんな楽しい事が起こるんだろうなあ。」

嬉しい言葉だった。

この日、ライン友達が1人増えた。

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