第十二話
「風、月花、次の標的は美濃の斎藤家だ。鳥はもう斎藤家に忍び込んでいる。」
私と月花は信長様から次の標的を聞いていた。
「斎藤家って濃姫様のご実家ではありませんでしたか。それをなぜ攻めるんですか?」
「舅殿の遺言状だ」
「遺言状?」
「ああ、桶狭間から四年前、濃の父、斎藤道三は息子の斎藤義龍に討たれて死んだ。その時舅殿は俺に遺言状を渡してきた。『美濃国を受け渡す』と。だから戦う。濃の実家だからといって手は抜くなよ。」
「「はい。頑張ります!」」
「もう下がってよい。」
「「はい。」」
信長様の部屋を出た後、私は前々から気になっていた事を月花に聞いてみた。
「ねえ月花、鳥って潜入の任務多くない?」
「鳥は潜入術や情報力に特化した忍び、私は毒薬や武器使いに特化した忍びだから。仲の良くて、全体的にバランスの取れてる僕たちをお師匠は信長様に送り出したんじゃないかな。」
「なるほどね。ところでさ、濃姫様に聞いてみない。」
「なにを」
「辛くないかを。」
「確かに気になる。」
ということで濃姫様の部屋に行くことになった。
「濃姫様風と月花です。失礼します。」
「風ちゃん、月花ちゃんどうしたの~。急にきて~。」
「あの、信長様から、美濃の斎藤家と戦うといわれました。そこで濃姫様がつらくないか聞きに来たんです。」
「辛いって何が?」
「ご実家と戦うこと。」
「辛いわけないじゃないですか。織田家に嫁いできた時から覚悟はできていますから。」
「そうなんですね。」
その時の濃姫様の顔は本当に覚悟を決めた顔だった。
戦の風 古夜桜 @huruyosakura
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