第5話 夜の写真整理 透華side

 ※第四話の夜更かしの理由になります。

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 街灯と月の光だけが辺りを照らす頃、時刻は既に24時を回っており家に灯る明かりもチラホラ消え始めている。

 そんな中、明かりを点けたまま自室で作業をしている女子高生が居た。


 ◇


「まーくんの写真。フフッ……お義母さんがまーくんの写真を下さるなんて思ってもみなかった幸運だよ」


 透華はお弁当を作りに行った日に正樹の幼い頃の写真の中でデータが残っているものを、プリントアウトして貰うと約束していた。


「まーくんに突然永久就職しないかって言われたり、まーくんとの距離を順調に縮めることが出来たり、アルバムに新たなまーくんが加わる予定が出来たり……」


 人生イージーモードかと思ってしまう程に透華はすっかり浮かれていた。


「こんなに順調だったら何か大きな障害が現れそうな気がしちゃうけど、そんな事無いよね」


 透華は正樹の写る写真がたくさん入った自作のアルバムをペラペラと捲り、眺めながら整理をしている。


「最近は開けてなかったけど、これからはきっとたくさん写真が増えるから整理は必要だよね……」


 これからの未来を想像してニヤケが止まらない透華は頭を振って雑念を出来るだけ抑えつつ作業に戻る。


「やっぱり前から後ろに成長していく感じで設置した方が良いのかな。それとも写真の種類ごとに分けた方が良い?」


 どうであれ、と透華はレイアウトを決める前に一先ずアルバムから写真を全て取り出す事にした。


 ◇


「あ、これまーくんの家の庭で初めてプールをした時のやつだ」


 その写真は透華と正樹が家庭用プールの中で手を繋ぎ、もう片方の手で各々ピースをしているものだった。


「私、この時はまだまーくんのこと異性として意識してなかったんだっけ。まーくんが笑顔でカメラにピースしてる横で明らかに作り笑いしてるな、私」


 こんなにカッコ良いのにな〜と透華はぶつぶつ言いながらプール関連の写真たちを横に避けて更にページを捲る。


「これはまーくんの家族とウチの家族で初めて遊園地に行った時のやつだ。この写真をお母さんに貰った時はびっくりしたなぁ」


 透華が眺める写真に写っているのは透華と正樹だけで他には誰も写っていない。子どもの思い出として撮っているものなら何の変哲もない。しかし、驚くべきは透華と正樹がハグしているという事だ。


「私、どうして忘れちゃってたんだろう。この時、私がお化け屋敷で怖がって泣いていたからまーくんがハグしてくれたらしいけど……。まーくんとの折角の初ハグなのに……でも、こんなに幼い頃の記憶、それもまだ恋愛対象としてまーくんを見ていない時の話だもんね。そりゃ忘れる事だってあるか……」


 透華は次のハグは絶対忘れないものにするから、と意気込んで更にページを捲る。


「小学校の頃の臨海学校……」


 それはこのアルバムの中で最も枚数が多いイベントの写真であり、透華が最も記憶に残っている写真たちであった。


「この時にまーくんに惚れたんだよね、私。そのせいで学校行事の写真販売、130枚買ったんだよね……」


 臨海学校が終わってから販売される写真販売で透華は自分が写っているもの、正樹が写っているもの、合わせて130枚を購入した。


「お母さんに買いすぎだって怒られてお小遣いで払う約束したっけ……」


 透華は懐かしみながら数多の写真に目を通していく。


「じゃあ次は……ってもうこんな時間なの?! 寝てすぐ起きれるかな? 徹夜でまーくんに会いたくないし、少し寝るだけで回復するよね。お母さんに時間になっても起きなかったら起こしてって言ってあるし」


 透華は机の上に置かれた写真を一旦丁寧に机の横にある引き出しに仕舞い、寝る事にした。

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