第10話 期末テスト
「今日からテストだね。まーくんは準備出来てる?」
「透華のおかげで今日の数学も現代文もなんとかなりそうな気がする」
テスト当日、俺と透華はいつものように会話を弾ませながら学校に登校している。
「よかった。でも、大事なのは英語だからね。覚えてる?」
「覚えてるよ。負けた方は勝った方の言う事を何でも聞くってやつだよな」
「そう。絶対だからね」
透華は俺にどうしても聞いて欲しい願いがあるのか、強く念を押してくる。
「何かして欲しい事とかあるのか?」
「……ええっと、ナイショ。もし負けたら言い損になっちゃうし」
こういった機会でしか俺に頼むことが出来ないほどハードルが高いものなのか……?
「な、なるほど」
もし俺が勝ったら何を聞いて貰おうかな。
今からテストだと言うのにテストが終わった後の事を考えながら歩いていると学校に到着してしまった。
◇◇◇
「じゃあまた後で」
「うん。頑張ってね」
席はさほど遠くないがそれぞれ今から始まるテストに向けて勉強をする為に各々の席に着いた。
「まずは、数学か……」
今回のテストで出てくるであろう公式や、問題集で出てきた解き方はある程度は頭に入れたが不安が残っているので復習がてら問題集を見直す。
俺が問題集のテスト範囲の部分を見終わるより先にSHRが始まった。俺は復習を一時中断し、SHRが終わったところで再度復習をテストが始まる十分前まで行った。
「なんとかなるはず」
こうしてテストが始まった。
テストの内容は簡単な計算問題が思っていた以上に多く、割と高得点が目指せそうなものだった。
続く現代文のテストも透華の教えもあってか対策がしっかりできており、平均点を超えられた、と思えるほど自信がある内容だった。
◇◇◇
「透華、ありがとう。現代文が今までよりも簡単に感じた」
「ううん、まーくんが頑張った結果だよ」
帰り道、透華と朝も登校で通った道を辿るようにして歩く。
「いや、努力の道筋を示してくれた透華のおかげだよ」
「えへへ、そうかな。じゃあ私もまーくんに習った英語で高得点を取れるように頑張らなとね」
会話をしているうちに透華の家の前に着いた。しかし、透華は一向に家の中に入ろうとせず、何の違和感もなしに俺の隣を歩き続ける。
「あれ、今日も勉強会する感じ?」
「あ、え、もしかして今日はしない予定だった?」
テストだった事もあり、学校自体はお昼前に終わったので俺は今日はそれぞれの家で勉強するつもりだったのだが透華は一緒に勉強をする予定だったらしい。
「お昼ご飯とかは……」
「お義母さんに一緒に食べようって言われたんだけど、まーくんが一緒に勉強するって言ったわけじゃなかったんだ」
どうやら母さんは今日も一緒に勉強するものだと思っていたらしく、お昼ご飯も一緒に食べるものだと思っていたらしい。
「ごめん、知らなかった。でも一緒にご飯食べるのなら明日の教科を一緒に勉強しよう」
透華の家過ぎちゃったな……荷物を取りに行くのも二度手間だし、教科書とかは俺のを使えばいいか。
◇◇◇
他の教科も難なく乗り越えて遂にテスト最終日、英語のテスト日になった。
「まーくん。準備は出来てる? 私、負けないよ」
「まぁ何となくは出来てるかな」
正直言って昨日はあまり英語に力を入れて勉強していなかった。理由は今日あるもう一つの教科が絶対と言って良いほど復習が必須な古文だったからである。
「えへへ、まーくんに言う事を聞いてもらえる」
どうやら透華は既に勝った気でいるようだ。
妄想が膨らんでいるのかえへへとニヤケが収まらない様子だ。
「透華、今日は帰りどうするんだ? テストも終わるし、今日くらいは勉強会無しにするか?」
「うーん、そうだね。お義母さんとも何も連絡取ってなかったし、今日は普通に家に帰るよ」
透華と母さんは一体どこまで連絡を取り合っているのだろうか。
もしかして色んな写真を透華に渡してるんじゃ……ってそんなわけないか。
「古文の勉強をちょっとやってから、英語の勉強すれば何とかなるだろう」
今まで俺は英語で透華に負けたことは無い。
なので呑気に負けるはずはない、なんて考えて学校に着いても古文の勉強を優先しようと考えていた。
◇◇◇
「何とか平均点は越えられたかな。透華さまさまだなホント」
「まーくん、もうすぐ夏休みだね。一緒に色んなことをしようね」
古文のテストが終わり一服する俺に透華が話しかけて来る。
どう言うことだ、急に夏休みの話なんて。もしや英語の勉強をさせないようにでもしているのか? それとも負けた方に言うことを聞かせるやつが夏休みと関連しているのか?
「そうだな。夏休み、色々しような」
「もー、ちゃんと聞いてる?」
俺は英語の復習を始めるためにせっせと教科書を広げたり単語帳を見ていたので透華に話を聞いているのか、と問われてしまった。
「聞いてるよ。でも今は透華に勝つ為に英語の復習をしないといけないからさ、というか透華の方は大丈夫なのか?」
「私は完璧を完璧にしたくらい自信があるから大丈夫!」
どうやら透華は相当自信があるらしい。
俺、負けない……よな?
◇
英語のテストが始まった。
因みに透華が挑んできたのは文法問題を扱う英語表現ではなく長文問題が出てくるコミュニケーション英語だった。
何故そっちを選んだのかは未だに分からないがそんなことを考えるのは辞めて問題に取り組む。
結構余裕だな。
スラスラと問題を解いて最後の問題ページに辿り着いた。
『授業内で取り扱った表現を用いて文を完成させなさい』
「え……」
思わず声が漏れてしまった。
授業内で扱った表現……。何か特殊な言い回ししてたっけ。
やってしまった。
英語に関して得意という意識が強かった故に授業を部分的にしか聞いていない。
これは俺の悪い癖でずっと直すべき所だった。
なるほど、透華はこれを狙っていたのか。
俺が授業を生真面目に受けていない教科で更にこの問題が出ることを予測して……。
やってやろうじゃねーか。
俺は合っているのか間違っているのか分からないまま、授業をできるだけ思い出し、透華に見せてもらった英語のノートを思い出しできる限り全力を尽くして解いた。
テスト回収の時、俺は透華の方を向いた。丁度透華もまた俺の方を見ていて……微笑んでいた。
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