第14話 夏休みの課題を終わらせる 2
当然というか、俺は透華よりも速く問題を解き終わった。
透華が問題を解き終えるまでの間俺はベッドで横になることにした。
「今日の昼ご飯何かなぁ」
透華に聞こえない程度の声量で俺は天井に顔を向けたまま一人呟く。
「……なにかな」
朝から昼ご飯を張り切って作るって言ってたけど何を作るのだろうか、透華だけでなく俺も未だに分かっていない。
「終わったーー!」
俺がベッドに横になってから数分で透華は終わったことを知らせるように腕を天井に伸ばし、ずっと同じ姿勢だった身体を伸ばす。
「じゃあキリも良いし、時間も良いし、リビングに行くか」
「うん!」
階段を下りてリビングに入り、いつも食事をしているダイニングテーブルに目をやるといくつもの皿と色んな具材が置かれてあった。
「お義母さん! これは何ですか?」
「これはね、タコス……でいいのかな。このトルティーヤっていう薄い生地に色んな具材を入れてから包んで食べる料理なんだけど、今日はセルフで好きなものを入れて三人で食べたいなって思ってるの」
確かにこれだったら喋りながら一緒に包んで食べられるし、話も繋げられそうだから会話も広がりそうだし……ってそんな事しなくても二人は普通に会話を続けられるか。
「うわぁ、凄い! これ全部美味しそう……」
席に着いた透華が机の上に並べられた料理を見回しながらボソッと呟いた。
「じゃあ透華ちゃん、一回私が包み方を見せるから真似して作ってみて!」
母さんはそう言うと薄く、円の形のトルティーヤ生地をお皿に乗せてから他の具材の土台となるように生地の上に野菜を盛り付ける。
「……でこの土台の様になった野菜の上に照り焼きチキンとか、挽き肉炒めとかコーンを乗せる。そして、自分の身体側にある生地の端っこから真ん中に向けて畳んで、次は左右から真ん中に向かって畳む」
母さんはこれで完成と言うと出来たものにかぶりついた。
「やってみます!」
透華は母さんの真似をするように野菜や具材を乗せ、生地を包み、あっという間に一つ作った。
「これが……い、いただきます!」
透華は豪快にかぶりついたと思うとそのまま二口、三口と無言で食べ進める。
口の中に残っているものが無くなってから漸くしゃべり始めた。
「美味しい……。凄い美味しいです」
「それは良かった。もっといっぱい食べてね」
「はい!」
そんなやり取りを見てから俺も同じように作り、食べた。
◇◇◇
昼食も食べ、少しばかりの休憩も取ってから俺と透華は午後の勉強を開始することにした。
普通ならさっきの続きをする所だろうが、俺たちは話し合った結果数学をすることにした。
「いつも使っているこの問題集の既定の部分を二周だっけ」
「確か、二周に加えて間違えた問題をもう一度やってこい、みたいな課題だった気がする。夏休み明けのテストもあったような……」
「なるほど。じゃあ今日、一周終わらせて明日もう一周しよう。それから間違えた問題は始業式の日が近づいてからにしよう。その方が良いと思う」
さっきまで使っていた古文のプリントや英語長文の問題集は片付けて数学の問題集と演習用のノート取り出して机の上に置く。
「透華……よろしく」
「はーい!」
解答は流石に付いているが透華に教えて貰う方が遥かに分かりやすいので透華には申し訳ないが分からない問題は基本的に透華に聞くようにしている。
「あ、これも分からねえ……あ、これも……」
◇
長い時間が経過して漸く俺の数学の課題の約三分の一が終了した。
「透華、ありがとう。まじで分かりやすかったし、助かった」
「ううん、大丈夫! 私もあとちょっとで数学の課題が終わりそうな所まで来れたから」
数学に手間を取ってしまい、あまり課題を進める事は出来なかったが一周だけであっても数学の問題を解くことが出来たのが良かった。
「そろそろ時間も時間だし……」
「そう……だね。明日もあるし」
「明日も俺の家で課題を進めるか?」
「うん!」
明日の約束もした所で解散という事になった。
「あぁ、そうだ。透華、明日は家に着いたら連絡をしてくれても良いし、着いてすぐにインターホンを押しても良いからな」
「う、うん! ありがと」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます