夏休み
第13話 夏休みの課題を終わらせる 1
夏休み初日——
「今日のお昼は何を作ろうかなぁ……。透華ちゃん、何食べたいかな」
昨日、学校から帰って来て母さんに翌日の朝から透華と勉強することを伝えた時から母さんのご機嫌な様子は変わっていない。
俺が朝起きてリビングに入った時もそのテンションの高さは続いていて目に見えて分かるほど機嫌が良さそうだった。
「そういえば透華と何時に来るとか相談してなかったな……」
「透華ちゃんは10時に来るみたいよ。『10時にお邪魔します』って連絡が来ていたから」
あー、なるほど。俺じゃなくて母さんに連絡した感じね。
……二人は一体どういう関係なんだ?
というよりあと数十分で透華が来るから用意しないといけないな。
俺は自室に戻ってここ数日で散らかってしまった部屋の片づけを始めた。
「夏休み初日で自分の部屋を片付ける口実が作れたし、この課題を終わらせるための勉強会も案外メリットが大きいかもな」
散らかったものたちをあるべき場所に仕舞い、ベッドを整え、最後に掃除機をかけて透華が来るまでにすべき事を終えた。
透華が来るまでに少し時間があるので俺はゴロゴロして過ごし来訪を待った。
9時58分、そろそろ透華が来るだろうと思い、俺は自室を出て階段を降りてリビングにて透華を待つことにした。
それから2分が経過して丁度テレビが示す時刻が10時になった時、インターホンが鳴った。
もしや少し前から家の前に居たのではないだろうか、そう思うほどにぴったりの時間にインターホンが鳴った。
時間ぴったりに透華が来た事を考えるよりもまずは透華を迎え入れる為に玄関に向かった。
◇
玄関を開けて透華を家の中に入れる。
「おはよう透華。時間ぴったりにインターホンが鳴ってびっくりした」
「まーくん、おはよ! 課題をするだけなのにって思うかも知らないけど、今日が楽しみでちょっと早めに来ちゃってた」
やっぱり早めに来ていたのか。そりゃそうだよな。
玄関から廊下を歩きながら話を続ける。
「なら言ってくれれば良かったのに。外で待たなくても……」
「でもほんの数分だから」
母さんに顔を見せたいという透華をリビングに連れて行く。
「お義母さん、お邪魔します!」
「いらっしゃい、透華ちゃん。お昼張り切って作るから勉強がんばってね!」
「はい!」
リビングを出た俺と透華は階段を上がりながらさっきの話を続ける。
「段々暑くなってくるし今度からは数分でもちゃんと言ってほしいな。透華が熱中症で倒れたりしたら嫌だからさ」
「……うん。ありがと。…………今度からはって事は夏休みにまーくんの家に来て良いって言質取れたって事だよね。それに私の心配まで……」
「なんて言った? 最後の方が聞き取れなかったんだけど」
階段を上がっているせいか、透華の声が小さくなったせいか分からないが途中から聞こえなかった。
「ううん。ただ、まーくんが大好きってだけ」
「…………」
そんな無邪気な笑顔で堂々と告白してこないでくれ……。
可愛すぎる。今の透華の笑顔は核兵器なんかよりも攻撃力が高いと宣言しても良いくらいに可愛かった。
今日って勉強を詰め込まないといけない日だよな? どちらかといえば気怠げになってしまう筈だよな?
だるい気分を透華が居ることによってプラマイゼロにするという想定だったが、勉強を始める前の今から何故か既に勝利という言葉が脳裏によぎった。
「まーくんの部屋、お邪魔しまーす!」
「別に模様替えとかして無いから前に来た時と変わらないし、そんな改まらなくても」
今日は透華がいつもとは少し違う。それほど楽しみにしていた、という事だろうか……。
◇
部屋に入り、机の前に座って勉強をする為の準備を整える。
「今は朝だしアウトプット系を先に済ませるか」
「文系の課題って古文と英語だけだったっけ?」
「あとそれに加えて日本史の教科書に書かれてるコラム?を読んで調べてそれについて自分の意見を書け……みたいな課題があった気がする」
「あー、章ごとの後ろにあるやつか……なんか面倒くさそう」
さっきの告白が俺の心にまだ残ってしまっているせいかおかげか、今なら透華の分の日本史の課題もやってしまいそうだ。
「よし、古文と英語どっちの課題から進める?」
俺は思考に影響を及ぼさない為にさっきの告白を頭の片隅に置いてなんとか切り替える事にした。
「うーん、古文からにしようかな」
「了解!」
俺と透華はカバンの中から課題として渡されたプリントを机の上に置く。
「助詞と助動詞の復習と問題演習だな。割と時間掛かりそう」
「そうだね……」
助詞、助動詞がそれぞれ分類ごとに章で分かれていて、まとめとして長文問題が後ろに付いているプリントである。
「これ答え付いてないし章ごとに見せ合うか」
「うん。そうしよう」
一章終わるごとに見せ合いをしつつ喋りながら休憩を取る。そしてまた課題に戻る。これを繰り返すことで苦も無く最後の長文問題までたどり着いた。
「最後までたどり着いたけど、どうする? そのまま長文問題に取り組むか、いったん休憩を挟むか、それとも英語の課題を少しやるか」
「英語の課題って長文問題集を一冊だよね……」
「そうだな」
「じゃあ、一問だけ英語の長文問題をやってから休憩にしようかな」
「そろそろお昼時だし、丁度いいかもな」
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