第8話 お邪魔されます
「はい、着きました。」
そのままマンション内に入っていこうとする九条さんを止めて、俺は驚いてながら聞いてしまった。
「えっ…。ここって九条さんが住んでるマンションなの?」
「はい、そうですよ。」
やっぱり聞き直しても、それが本当の事だと返されるので、俺はその事実を受け入れるのに少し時間を使ってしまった。
「あの、どうかなさいましたか。」
そんなとき、九条さんが俺の顔を覗き込んで話してきた。
俺は声を掛けられたことに気づいた時には九条さんの可愛らしい顔があり、顔を赤く染め上げながら、俯く。
でも、俺は伝えなくちゃいけないことを思い出し、口を開いた。
「九条さんはこのマンション住んでるでしょ。実は…、俺もここに住んでるんだよね…。」
俺が顔を上げて言うと、九条さんは何故だか分からないがとてもキラキラしたような視線が返ってきた。
俺がそんな視線を受けてタジタジになっていると、九条さんは急に歩を進めながら、聞いてきた。
「斉藤くんの部屋はどこですか?」
「え…、えっと、俺の部屋は1階だな。」
俺がそういうことによって九条さんの視線がますます輝かしいものになっていく。
「え、本当ですか!、私も1階なんですよね。105号室です。斉藤くんはどこですか。」
「俺は102号室。」
「分かりました。」
俺は九条さんの返事を疑問に思っていると、自分の部屋の前に着いた。
「じゃあ、九条さん。」
「ん、どういうことですか。」
俺はこのまま九条さんと別れると思っていたのだが、九条さんが「部屋の鍵開けてもらってもいいですか。」と聞いてきて、ますます疑問に思いながらも俺は自分の部屋を施錠を外し扉を開けた。
「では、お邪魔しますね。」
「え!?」
俺のことなど気にせず、九条さんはそのまま肩を組んだ状態で、俺の部屋に入っていった。
「へぇ、部屋はしっかり綺麗にしているのですね。」
俺はこんなことを言ってきた九条さんに、俺ってそんな整理整頓とかできない人だと思われていることに少しムッとしてしまった。
まぁ、昔は整理整頓も掃除もできなかったけど…。
「斉藤くん、今日はご迷惑をおかけしてしまったので…。なんというかですね…、汚してしまった服は洗っておきますので、お風呂に入ってきてください。」
「えぇ、でも九条さんはどうすんの。さすがに俺が勝手にしたことなのに、ここまでしてもらうのはさすがに悪い気がするしさ…。」
俺がさすがに申し訳ないと思って言ってみると、九条さんは少し強引に背中を押して、「私のことは気にせず入ってきてください。」と少し強めに言われて俺はそのままお風呂に入らさせるのであった。
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