第15話 想い人との1日⑤ side 九条玲奈
彼をお風呂場へ無理やり押し込み、彼の制服のシャツとズボンを洗濯機に入れ、起動した後、一旦自宅へ戻り、制服から着替えようとしていた。
「ええと、どの服がいいのでしょうか…。」
今、私の前には、純白のワンピースと、白いTシャツとデニムのセット、そしてクラスの友人に無理やり押し付けられた猫耳メイド服がある。
(んー…、どうしましょうか…。彼にはアピールしたいですけど、過度にしてしまうと逆に嫌われるのではないでしょうか…。)
アピールはしていきたいが、過度にしすぎて逆に嫌がられてしまうと、恐らく私はへこんでしまうだろう…。
でも、しっかりアピールはしていきたい。
(んー…。やっぱり過度でもやってみたほうがいいのでしょうか…。)
悩みに悩んだ末、私はその結果だけは避けたいと思い、無難に白Tシャツとデニムを選んだ。
「よし、これでいいですね。」
私はそう独り言ちて、少し身だしなみを整えてから、また彼の家に戻っていった。
私は彼の家に戻ってきて、時計を見る。
もう10分程経っていたが、彼はまだお風呂から上がっていなかった。
どうしようかと悩んでいると、いつの間にか彼の部屋の前にからだが動いていた。
我慢しようとしたが、自分自身の欲望には勝てず、彼の部屋の扉を開ける。
彼の部屋は勉強机とベッド、クローゼットと本棚くらいしかないが、それでも綺麗に配置されていてとても過ごしやすくなっている。
そう思ってまわりを見ていると、勉強机と壁の間に収納ボックスがあった。
隠れる形で置いてあったので、なんだろうと気になって手に取る。
その中身を見て、私はすぐに目を逸らした。
中身は同人誌やグラビアの写真集が入っていた。
(さ、斉藤くんは、胸の大きい美人が好きなのでしょうか…。胸のほうはまだしも、載っているかたのほうが美人ですし…。)
私の容姿は一般よりかは優れているとは思っているが、私以上に容姿の良い人はいるはずだろう。
それなのにたまに聞こえてくる学校一の美少女という言葉がよく分からない。
そんなことを考えて、私はちょっぴり落ち込んでしまった。
私は気分を変えるために写真集などを直し、ケースを元の位置に直し、リビングの方へ戻っていった。
リビングに戻ってきた私は、やることがなく少しリビングを掃除をする。
それでも意外と綺に掃除されているので、あまり掃除する場所がない。
掃除で出たゴミを捨てようと思いごみ箱を見ると、そこには、プラスチック製の弁当のふたのゴミが見えた。
(あれ…、もしかして自炊されていないのかもしれません…。)
私は彼のからだが少し心配になった。
(……あっ、それなら私が作ってあげればいいのではないでしょうか…。)
私はこれで彼との距離を少しでも詰められると思い、内心ガッツポーズした。
「九条さん、洗濯ありがとう。」
そうこうしている間に彼がお風呂から上がっていた。
そしてこの時には彼の隠していた写真集のことはすっかり忘れていたのであった。
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