第11話 想い人との1日① side 九条玲奈

私はいつもの通学路から少し逸れて寄り道をしながら帰っているとき、斉藤くんと出会った。

出会ったと言うよりかは、ぶつかってしまったと言うべきだろう。

私は突然想い人が目の前に現れたことにドキッとして、思わず斉藤くんから顔を逸らしてしまった。


「く、九条さんは、大丈夫ですか。」


斉藤くんは自分自身のことよりも私のことを気遣ってくれたことに、また少しドキリとしてしまったが、返さないとと思い内心慌てながら答えた。


「大丈夫で…、すみません。ぶつかった時にそのまま足首を捻ってしまったみたいで…。」


私は斉藤くんと会えたことと、返すことに必死になっていて話しながら動いているときに足首を捻っていることに気づいた。

彼は自分に怪我がないか確認もせず立ち上がり、立てるかどうか聞いてきた。

普通は最初から気を遣って手を出して立たせるところだろうと思ったが、そんなところが彼らしくて少し昔を思い出してしまった。


「手を貸していただければ。」


「こ、このまま肩貸しますのですぐそこにある公園で処置しましょう。」


そして彼は私の手を取って立ち上がらせた後、私の腕を彼の肩に回してきた。

私は少しびっくりしてしまったが、彼は私がしっかり歩けないだろうと考えたのだろう。

気を遣ってもらっているからと言っても、流石にとてもドキドキしたし、とても恥ずかしくて少し彼から目を逸らしてしまった。

そのまま彼に支えてもらいながら、近くにある公園へと歩いていく。


「ご、ごめんなさい、巻き込んでしまって…。」


私は恥ずかしさもあったが、そこまでやろうとしてくれる彼に申し訳ないと思い、彼の顔を見ながらしっかりと言った。

すると彼の表情が申し訳なさそうなものととても暗いものに変わって、なにか思い詰めているのかと思いもう一度声をかけてみた。


「さ、齋藤くん?」


声をかけた後すぐ彼の顔から暗い表情が消えたが、申し訳なさそうな顔が少し濃くなった。

これはすぐ返さなかったからだろうと思いあまり考えず返事を待った。


「ご、ごめん。あとあまり気にしなくてもいいよ。なんならこっちこそごめん。怪我させちゃったから。」


このことに関しては彼だけが悪いのではなく、まわりをよく見ていなかった私も悪いので気にしないでほしいのですぐに返した。


「いえ、謝る必要はありませんよ。怪我したのは、まわりをしっかり見ていなかった私も悪かったので。」


私が微笑みながらしっかり言うと、彼の顔から申し訳なさそうな表情は消えたので、私は少し安堵した。

そんな話をしていると、いつの間にか公園に着いていた。











彼は私をベンチに座らせた後、彼は鞄からビニール袋を取り出して、私の反対側にある水道まで行って、水を汲んできた。


「あまり冷えないかもだけど、これで幹部を冷やして。」


私はもらった水入り袋を幹部に当てた。

それは意外としっかり冷えていて、とても気持ちよかった。


「あ、ありがとうございます。」


私は雰囲気が悪くなって、彼と話せなくなるのは嫌なので、謝るのではなく、感謝を伝えることにした。

すると彼はすこし嬉しそうに頬を緩めた。

少しドキリとしてしまったが、すぐに彼が声をかけてきたことによりすぐそちらに意識を向けた。


「少し冷やしたら、湿布も貼って、補強でテーピングもするから。」


「い、いえ、そこまでは…。」


私は心の中で、そこまでしてもらうのは、と思って留めようとしたが、する前に言ってしまっていた。

しまった、と思って彼をから目を逸らしてしまったが、彼は気にせず言ってくる。


「でも、しておかないと悪化するし、また捻挫するけど。」


私は正論を言われてぐうの音も出なかったが、もともとそうするつもりだったので、少し詰まったが答えることができた。


「……、は、はい、お願いします…。」


その後彼の顔を見ると、安堵した表情になっていた。

だが、応急処置をしてもらうときに足に触れることに今更気づいた私はものすごく恥ずかしくなって、俯いてしまった。

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