第5話 学校一の美少女とぶつかる


「だ、大丈夫ですか。」


「俺は大丈夫で、って九条さん!?」


驚きと相手が学校一の美少女ということもあって、少し緊張してしまう。


「さ、斉藤くん!?」


と驚いているのに加えて、なぜだか分からないが顔を赤らめて視線を逸らしている。


「く、九条さんは大丈夫ですか。」


「大丈夫で…、すみません。ぶつかった時にそのまま足首を捻ってしまったみたいで…。」


「まず、立てますか。」


「手を貸していただければ。」


「こ、このまま肩貸しますのですぐそこにある公園で処置しましょう。」


そのまま俺は九条さんに肩を貸して近くの公園まで移動していく。

九条さんの亜麻色の髪が俺の首にかかりくすぐったいことと華奢な体と豊満な胸が密着していることで急激に心拍数が上がる。

意識してはいけないと思いながらも、意識してしまう。


「ご、ごめんなさい、巻き込んでしまって…。」


俺は顔を上げて答えようとすると、申し訳なさそうにしながら、少し頬を朱に染めた九条さんの顔が見えた。


(こんな俺に身体を密着させるなんて嫌なんだろうな)


こんなことを思いながら歩いていると、


「さ、斉藤くん?」


と九条さんが言った。

俺は返答をすることを忘れていたことに申し訳なく感じながら、言葉を返した。


「ご、ごめん。あとあまり気にしなくてもいいよ。なんならこっちこそごめん。怪我させちゃったから。」


「いえ、謝る必要はありませんよ。怪我したのは、まわりをしっかり見ていなかった私も悪かったので。」


と九条さんは俺に気を遣って微笑みながら応えてくれた。

そうこう話しているうちに公園に着いた。
















「あまり冷えないかもだけど、これで幹部を冷やして。」


そう言って俺は公園の冷えた水道水を入れた袋を公園のベンチに座っている九条さんに渡した。

本当は氷を使いたかったが、近くに氷を買える場所がなかったので、水道水をつかった。


「あ、ありがとうございます。」


「少し冷やしたら、湿布も貼って、補強でテーピングもするから。」


「い、いえ、そこまでは…。」


「でも、しておかないと悪化するし、また捻挫するけど。」


「……、は、はい、お願いします…。」


怪我のリスクも高まるので、多少強引にでも処置を受けさせるようにした。

そのとき、顔を少し赤らめていることを九条さんが俯いていたので、俺は気づかなかった。


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