第1章 純白の少年 第02話 完璧な日々
「ただいま、幼稚園は申請出来た?」
「うん、なんとか申請出来たよ」
「それは良かった」
あの男とはもう1人の親の事だ、タバコとオフィスを混じえた匂いが印象的だった。
「〇〇もただいま」
「おかえりー」
どうやら私はあの男に信頼を抱いていたらしい、事実、大卒で大企業の子会社の製図を担い、模型も電気関係も気象にも詳しい。その時完璧な親だったのは確かだった。
「今日はお祝いにケーキを買ってきたよ」
「やった!、ありがとう!」
その後、3人で川の字になって寝た、目覚めてすぐ寝るとは贅沢だと思った。
その時点では、この両親に生まれて幸せだった、人生を約束されたとすら思っていた。それを思い掛かりだと痛感するまで、さほど時間は掛からなかったのだが。
次の日は予定が無かった
「僕は何をすればいいの?」
「何もしなくていいんだよ、折角だから明日香ちゃんと遊んできたら?」
明日香とは件の上の階の少女である、1歳年下で巻き毛が特徴的だった
「今日は何をしようか?」
「公園はまだ濡れていて遊べないね」
「じゃあ、残った雪で雪だるまを作ろうか!」
「うん!」
明日香の作った雪だるまは丁寧な球が2つ乗っていた、私のは縦長の潰れたアンパンだった。
2つ並んだ雪だるまにノスタルジックな思いを感じているとお腹が鳴ってくる、子供の空腹は速い。
「こっそり2人で駄菓子屋にいこうか」
「え、でもママかパパが居ないと行っちゃダメだって」
「大丈夫だよ、行こう!」
駄菓子屋は駐車場から右に曲がってすぐに在った、お婆さんが1人で経営している小さいものだ。
「いらっしゃい、今日は2人だけかい?」
「うん!、2人でお菓子を貰いに来たんだ!」
「そうかい、一人一つ、好きなのを持っていきな!」
「「ありがとう!」」
子供が歩く隙間も無いほど並んだお菓子を、2人は縫うようにして物色する。
ふと目に止まったのは、長細い螺旋状のゼリーだった。
「僕はこのゼリーがいい!」
「私はこのキャンディにする!」
「良い返事と笑顔だね!、またいらっしゃい!!」
「またね!、おばあちゃん!」
これは余談だが、後から聞いた話では母が後からお金を払ったらしい
2人で遊ぶ日々は穏やかな日差しのようであった、何をやっても、いや、何もしなくても楽しかった。あの穏やかな日々が今も陽炎のように揺れていて、そして消えた。
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