第1章 純白の少年 第06話 幼稚園での日々

幼稚園の事はあまり覚えていないが、1つ印象に残る話がある。


幼稚園では弁当を持参する制度だった、いつも夕飯の残りと冷凍食品を詰め込んだ普通の弁当だったのだがその日は少し凝ってみたらしい。蓋を開けるとゆで卵を切り抜いて海苔で目を描いたひよこが居た。

ひよこは云う。

「私を食べて」

「僕にはそんな事出来ないよ、食べたら死んじゃうんだよ」

「私はその為に生まれてきたの」

「嫌だ、ひよこに死んで欲しくない」

「でも、君が食べてくれないと私は捨てられてしまうよ」

「でも…でも…うぅ」

とうとう私は泣き出してしまった

「〇〇くんがお弁当が可愛そうで泣いちゃった」

「弱いやつだ」

「変なの」

そんなことを言われた気がするがどうでも良かった、私は恐ろしい獣になり下がろうとしていたのだから。

とうとう食べきれずに持ち帰った私に母は優しい子なんだね、とだけ言ってくれた。

同時に不安に思ったそうだ、この子は怨嗟渦巻く社会で生きていけるのだろうか、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る