第1章 純白の少年 第05話 引っ越し下
引っ越す日がやって来た、明日香は見ると泣いてしまうから来なかったらしい。見送りに来てくれないのを私は悲しんだ。
業者のトラックに荷物が詰め込まれていく、家族3人の人生が1台で収まってしまうのだから意外と少ないなと思った。
トラックに続いて我々も車で乗り込む、10分ほどで着く距離だったが子供には大移動だった。
その家は、黒い屋根と紫の壁の悪趣味な家だった。下水垂れ流しのドブ川が横に通っていた、線路から遮る物が無く電車の揺れと音は容赦なく子供を襲った、何の暗喩か大黒柱が2Fで途切れた歪な家だった。
後から聞いた話では遠方に住む父方の祖母を呼びたくて無理な構造にしたのだそうだ、金が無いのに手すりも至る所に付いていた。だが遠方で祖母は自立しており叔母とも仲が良かった、ただ自分が呼びたいだけの為にあの男は大金をつぎ込んだのだ。
私は生まれて初めて不安という感覚を覚えた、この両親に付いていくと大変な事になるのでは無いかと。
「どう。新しい家は、嬉しい?」
なにも嬉しくなど無い、最悪だ。だが親を悲しませないよう私は笑った。
「うん、嬉しい、嬉しいよ」
「そうだよね!、良かった!」
私は子供で居られなくなった瞬間である。
そして、あの男は会社から追い出された。
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