第4話 ステータスオープン



「ふーむ、これが刀ねえ...」


このゲームで刀はかなりレアな武器だ。本来なら、やった!金になる!!と大喜びするところだが、如何せんこの刀は今現在、錆にまみれた鉄屑に他ならない。


もしこれを鍛冶屋に出し、綺麗な使用可能な状態の刀に復元できたなら、高額で売り捌けるんだけど...。


鍛冶屋に出す金が無いッ!!


「いやあああああっ!!」


私は膝をつき奇声をあげた。もう打つ手がない事を実感し、リアルに死を悟ったからである。死にたくない、マジで。


「...び、びっくりした」


ふと聞こえた若い女性の声。しまった誰か側にいたのか変質者じゃん私!!と焦り声の方へ視線を移すと。


「だ、大丈夫...?」


ふよふよと浮かんでいる、幽霊がいた。


「いやあああああっ!!?」


「!?」


私はホラーが苦手である。またもや絶叫し、ふわふわと浮いている幽霊がギョッとし驚く。


「な、なに?...びっくりするから、大声はやめて...」


ゆ、幽霊が私の絶叫で驚いてるっ!!って、何この子、なんまら可愛い!!


光に蒼く輝く長い黒髪、整った顔立ち、紅い眼!!はだけた着物から覗く白い肌が色っぽい!...はっ


「あ、あの...幽霊さん。ちょっとそれは、その着物の着方はやめたほうが」


「...着方...?」


「はい。ほら、今はログアウト不能問題でみんなストレス溜まってるでしょう?そんな中にあなたみたいな美少女幽霊さんがいたら襲おうとする輩もいるかと...ん?幽霊って襲えるの?」


「えっ、あ、あたしが...美少女?」


頬を赤らめる幽霊さん。襲われた場面でも想像させてしまったか。申し訳ない。けれど、しっかり考えてほしい。こんな世の中だからこそ自衛していかねばならないのです。


「...ん?ていうかどこから来たんですか、幽霊さん」


「...私の名前はミオ」


「あ、ミオさん。どちらの幽霊さんなんですかね」


「さんは要らない。...あたしはこの刀の持ち主だったの」


「あー...」


なるほどね。私の【審美眼】は残留思念や呪いをも視認することができる。この幽霊さんもその類で、死した魂が刀へ宿ったとかそんなところだろう。


ゲームの世界なのに?とか私も最初は思っていたけど、視えるものは視えるんだから、あるんでしょ。適当で申し訳ないけども。


「えっと、あなたに返した方が良いですか?この鉄く、刀(危ねっ」


「ううん。返してもらっても私にはもう使えないから...あなたにあげる」


「あ、はい」



...はい。



「ところで、あなたの名前は...?」


「え、私?私はアカリって言います」


「...アカリのジョブは何?」


「商人です」


「そう...ならちょっと大変ね。バトルジョブじゃない商人だったら、少しレベルを上げないと刀は使えないわね」


「そうなんですよ。って、いやいや...商人は武器持てないですって」


この世界のジョブは大きく分けて二種類ある。


戦闘職のバトルジョブ。そして、採掘や作製を行うクラフタージョブ。


その二種類はそれぞれ違うステータスを持っていて、《筋力》のステータス一つとっても戦闘職では武器を持つ《筋力》で、採掘では岩を掘る《筋力》と異なる。


ちなみに私の商人もクラフタージョブに含まれる。よくわからんけども、おそらく戦闘職とそれ以外みたいな感じだろうね。


「え...アカリちょっとステータス見せて」


「あ、うん。ステータスオープン!」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



☆クラフター


《アカリ》称号【財神王】

職 商人 レベル81

体力 89/120

魔力 0/0

筋力 20

攻撃 3

防御 3

魔攻 0

魔防 0

運  12946


《スキル》

★審美眼

★アイテムボックス

・交渉術Ⅴ

・露店Ⅴ

・探知Ⅲ

・第六感

・読解Ⅳ

・読心術Ⅶ

・忍び足



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「レベル81!? ユニークスキル持ち!?」


驚くミオさん。やば、ちょっと嬉しい。サービス開始から頑張って絶え間なく上げ続けた商人のレベル。ここまで一年、リアルで家から出たことは片手に数えるくらいしかないっ!どやあ!


このゲームはレベルが上がれば上がる程、極端に上がりにくくなる仕様で、全ジョブレベル80が限界値と呼ばれている。いやマジで頑張った!!


...いや、これもしかして引いてたりするのかミオさん。おいおい、プレイし過ぎだろ!おまニートかよ!...みたいな。


「凄い...ユニークスキル持ち、【神王】の称号は一つのジョブに一人だけしか獲得できない...つまりあなたは全商人の頂点に位地するプレイヤー。...そっか、だから霊体であるあたしの姿を視認できたのか...」


いえす!頂点!トップ!でもさあ、そんな商人の頂点である私だけど、この街から出たことないんだよね。お恥ずかしながら...。あとお金無いけど。


「...まあ、そんな商人なのでこのようなクラフターステータスなんですよ」


「え?...ああ」


驚いていたミオさんが我に返る。そして彼女は衝撃的な事を言い放った。


「それ、2ページ目あるわよ」


「え、そんな...まさか」


なわけないじゃん。ページ1/2とか表記も無いのに。と、疑いつつ、言われるがまま指でステータスをスイっと横へ流してみる。


私、βテスト版からずっとプレイしてるんだよ?そんな事気づかないわけ...




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



☆バトル


《アカリ》称号【ー】

職 ー レベル0

体力 89/120

魔力 0/0

筋力 5

攻撃 12

防御 3

魔攻 4

魔防 4

敏捷 7

運  8


《スキル》

・ー



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




あーるー!




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