第13話 戦い



私のユニークスキル【審美眼】の力にはプレイヤーやモンスターのステータスを強制開示する能力がある。だから一瞬でわかった。


目の前にいるこの紫色毛のクマちゃんがBクラスの化物だと言うことがね!!


...ちなみにこの強さのモンスターを倒すにはミノルのような上級戦士レベルのプレイヤーが三人は必要と言われている。


「話が違...うわあっ!?」


強襲。ベノムグリズリーは威嚇もすることなく私にその爪を振り抜いてきた。それを紙一重で避ける。


「大丈夫?アカリ!」


「大丈夫、いや、大丈夫じゃないよミオちゃん!?いるじゃん!!Bクラスいるじゃんッ!?」


「まあ、うん!どんまい」


どんまい!?それがこの状況でかける言葉!?


「でも聞いてアカリ。落ち着いてやれば勝てるから。とりあえず私の魔力を使って」


そう言って私に抱きついてきたミオちゃん。すると彼女は私の体と一体化してしまった。なんか体が温かい。


「アカリ、これで魔力が使えるわ」


「う、うん...で、どうすれば」


「いつも練習でしてきたことを思い出して。あなたなら戦えるよはずよ」


「が、がんばる...」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



☆バトル


《アカリ》称号【ー】

職 ー レベル60

体力 5820/5820

魔力 4498000/4498000

筋力 1567

攻撃 1386

防御 1490

魔攻 2021

魔防 1886

敏捷 1336

運  861


《スキル》

・ー



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「いや魔力、多ッッッ!!?」


「!?」


なんじゃ、こりゃ!?これがミオちゃんの魔力!?桁が違うなんてもんじゃない...!!


ってか、これ...これだけ魔力あれば物理防御も補正されて全然ダメージ受けないんじゃ!?


「ぐるるる」


私はちらりとベノムグリズリーの爪と牙を見た。


(...いや、無理)


試すのは無理。怖すぎる。それにベノムでしょ?毒あるでしょ絶対。それにいくら魔力があっても私のレベルじゃこの全てを扱えない...魔力量に体が耐えられない。


「アカリ!ほらボッとしてない!早く刀を出して!」


「はっ、ご、ごめん!」


私はアイテムボックスを出そうとした。が、それと同時にベノムグリズリーが突進してきてそれを阻止された。


「っと!!」


またもやスレスレで爪と体当たりをかわす。背後にあった巨大な樹木がかわりに餌食となり根本からけたたましい音をたてズズンと倒れた。怖っ!!


けれどベノムグリズリーの攻撃を二回も避けられたのには偶然ではない理由がある。これはミオちゃんとの訓練で発見した【審美眼】の副次効果。


敵の動きが読めるのである。


攻撃には魔力の偏りが生まれる。例えば右手で攻撃しようとすれば右手に魔力が集まり、走ろうと力を入れれば脚に魔力が集中する。


その僅かな動きを私の眼は捉える。だから言い過ぎかもしれないけれど、半ば予知のような攻撃予測が可能となった。


――ブン


「っと」


次々と繰り出される爪による攻撃。それをかわしつつ刀を出すタイミングを計る。私の3倍くらいある巨体なのに動きがなまら早い。タイミングを見誤れば確実にあの爪が私の体を引き裂く。多分。


(攻撃はかわせる...けど武器を取り出す隙がない。だったら)


私は身をかがめ、姿勢を低くする。すぐさまベノムグリズリーが鋭い爪を上から振り下ろしてくる。私はそれを横へ転がりながら避け――


――ボゴッ!!


「ぐおおっ!!?」


ベノムグリズリーの顔面目掛け魔力を込めた石を投げた。身をかがめた時に拾った石。これにより隙が生まれる。


アイテムボックスから素早く《黒錆ノ刀》を取り出した。


「よしっ!」


私は構える。顔横に柄を持ってきて、切先をベノムグリズリーに向ける。腰を低く落とし、ミオちゃんに習ったように重心を安定させた。


ミオちゃんが一言も喋らない。多分、私が集中出来るようにだと思う。ちょっと寂しい。


「来い、ベノムグリズリー」


「ぐるるる...」



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