第23話 パリィ



――キィィィン!!


「ッッ!!」


カウンター。【疾狼牙】を繰り出し、白き少女の攻撃を迎え撃とうとしたが、あまりの疾さに斬撃に《黒錆ノ刀》をあて逸らすことしかできなかった。


そして――


「!?」


(なっ、私の脚に!!)


すれ違いざま、白き少女は剣を持っていない方の手で私の脚を掴み、突進を無理やり止め体勢を立て直す。


彼女はそのまま新たに斬撃を放ってくる。


キィン!


――立て直し、はやッ!!


幾度も撃ち込まれる剣に防戦一方。だが、攻撃はしっかりと見えている。【審美眼】の能力のお陰だろう...このスピードについていけてる!!


ガキィン!


――魔力と体の動きで太刀筋を予測、その力の流れを見極めて私の《黒錆ノ刀》で叩き弾く!!


積み重なる攻撃と、それを弾く音。


数百にも及ぶ斬り結びだが、未だ攻撃に転じる事はできない。白き少女の攻撃が疾すぎる。


(...まるでハイレベルなシューティングゲーム、手が震えそうになる!!)


でも、私...ちゃんと受けれている。


もし一太刀でも浴びれば確実な死が待っているだろう。間違いなくオーバーキルレベルの火力。もしかしたら跡形もなく吹き飛ばされるかも...



――でも、私が廃人ゲーマーだからかな。



ギィン、キン――!!



――命をかけた戦いなのに、さっきまで恐怖で動けなかったのに...今、この瞬間は、心の芯が震えるくらいに


「...楽しい!!」


ミオは考える。剣を刀で弾く...いわゆる《パリィ》という高等技術。それを教えてもいないアカリが使いこなし、歴代最強と謳われたプレイヤーと互角に渡り合っている。


勿論、【審美眼】のユニークスキルがあってこその芸当ではあるが、彼女は《パリィ》のスキルを持っていない。つまり、スキルの補助と補正が無い中、己の動体視力のみを使った疑似パリィで、高速の斬撃を全て弾き飛ばしている。


「...ホントに、スゴい...」


相手はバトルジョブの最高峰、【剣聖】だというのに。


そして、やがてアカリには集中の果て、音さえ届かなくなった。



――ああ、懐かしい感覚だ...深く、沈む。そんな感覚...。



ずっと前にやり込んでた格ゲーやFPS...凄腕の人達と殺りあってた時みたい。


ひりつく心臓、ゆっくり流れ出す時、消える音。


これが、あの時と同じなら...私は勝てる。必ず、その時が...動きに綻びがくる。呼吸の乱れとも言える隙。


そこを狩る。






――が、しかし。限界が訪れているのはアカリも同じだった。


蓄積され続ける疲労が、目には見えないスタミナの数値を高速で削りつつあった。


更に、あとひとつの形態変化があること。そして、白き少女がまだスキルを使っていないことに、彼女は気がついていない。


ゆっくりと、戦いの終わりを死神が運ぶ。





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