第16話 保存
それからまた二ヶ月が経過し、ここでの暮らしに私達二人は完全に順応していた。ダンジョン奥に足を運びあらたな食材を見つけそれを採取、更には珍しそうな鉱石も見つけることに成功し、地上での楽しみがどんどん増えていくこの生活が楽しくすらなりつつあった。
(うふふっ、どれだけ高値がつくかなぁ♪)
にやにやしている私をミオちゃんが心配そうに見ている。
「何かあたったかしら...」
食あたりの心配されてる。
「あたってないよ?」
「それならいいんだけど。それじゃあなぜ一人ご機嫌になっているの?」
「いやあ、だーってさ。ここでしか採れない貴重なアイテムって絶対高値で売れるじゃん?それがすーっごい楽しみでさあ!えへへっ」
地上ではかなり珍しい植物の葉である《火腫葉》や岩石地帯にあった岩から採取できた《爆粉塵》...他にもまだまだあるけど、このダンジョンはホントに宝の山だよ!
「なるほどね。確かに...このダンジョン自体入れるプレイヤーは限られているから」
「うんうん」
「でも、大丈夫なの?」
「え、何が?」
「鉱物の類は大丈夫だろうけど、食べ物は腐っちゃわない?」
食べ物には鮮度が設定されていて時間が立つごとにその数値が減っていく。調理スキル等でその値を伸ばしたり、別の料理として作り直せば保たすことが出来る。
まあ、要するにリアルを元にして「食べ物」をゲーム内に忠実に再現しているのだ。
でも、私はそれを無視する事ができる!
「ふっふっふ。それが腐らないのですよ」
「?」
「私のアイテムボックス」
ボンッ、と出てきた四角い箱。
「このアイテムボックス内では時の流れが止まっているのです」
「!」
「聡明なミオちゃんならばもうお気づきでしょう。そう、時が止まっているということは食材が腐食する事もない...つまり、アイテムボックスに入れておけば半永久的に鮮度の高い食材がご提供できてしまうってことさぁ!!」
どやあ!!
「そうなんだ...凄いわね。というかそのアイテムボックスだけでもかなり稼げそうね」
「うん!これまでにいっぱい稼いだよ!!」
アイス販売とか氷売りとか!!夏場の猛暑日は、水をキンキンに冷やして売り歩くだけでもバチクソ儲かったぜ!!
まあこの世界でも水道はあるんだけどあんま冷たくないんよね。冷蔵庫もないし。冷蔵庫代わりになる物はあるけど、それを手に入れようとすればお金がすっごいかかる...不便だよねえ。アイテムボックスを手に入れる前は私も頭を悩ませていたもんですよ。
ちなみにいうと私が売っていた冷水は、クランの黒魔法使いのお友達に氷魔法を使って冷やしてもらいました。二人で大儲けしましたのは良い思い出。
懐かしいな...クランを抜けて旅に出たあの子、元気かな。
「ふふ」
にこにこと笑うミオちゃん。そういや、彼女と会うまでずっと一人だったな。クランにいたほとんどの仲間達は、ミノルについていけなくて居なくなっちゃったし。
多分、ミオちゃんも...霊体になる前にお友達とか仲間がいたんだよね。
その人達と会いたいって思わないのかな。
「アカリ?」
「ん?」
「どうしたの、ぼーっとして」
「ごめん、ちょっと考え事。あはは」
「...大丈夫よ。もう少し頑張ったらダンジョンから出られるわ」
「...!」
ミオちゃんは優しいなあ。
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