第6話 そっと
「アカリ、あなたはあくまでも商人だからね。魔力を供給できる限界値が低い...もしかしたらGランクモンスターを倒せるかも、だけど逆に致命傷を負う可能性も高い。だから無理」
「じゃ、じゃあ何だったんすか、ここまでの話は...」
私の反応を見て、ハッ、という表情をするミオちゃん。
「はあ...ごめんなさい。遠回しに説明しちゃう癖があるのよね、私。...でも、結論から言えばアカリはレベルさえ上げられれば強くなれるわ」
「そ、それはどうやって...レベル上げの方法は」
「狩り場があるのよ。あなたに適した」
「...狩り場が。けど、そこまでたどり着けないよ...外は怖いもん」
「そこをなんとか...頑張れないかしら」
「んんん...し、死ぬ可能性があるのはちょっと」
...いや、まてよ。死ぬ可能性って、今の私なら街にいても外にでても、どっちもかわらんのでは?
街にいれば安全だけど、そのうちまたミノルがあらわれ買い取りを迫ってくる。しかし私には金が無い...おそらく買い取れない私は殺される。そして奪った装備品を奴らは売り払うだろう。
でも、ミオちゃんと狩り場に行けば強くなれる可能性がある。どれだけレベルがあがるのかはわからないけど、頑張ればミノルに一矢報いる事も可能かもしれない。そうだよ上手く行けば《忍び足》で暗殺も...(冗談だよ?)
「...ダメかな」
思案する私の顔を覗き込むようにミオちゃんが近づいてきた。
「...わかった。私、行くよ」
まあ何よりミオちゃんといるのが楽しい。それが一番の理由になりつつあった。まだ会って間もないけど、話していて楽しい。
「良かった!」
ぱあっと明るい表情になるミオちゃん。
「でも、なんで?」
「?」
「なんでミオちゃんはそんなに親切にしてくれるの?」
「...あたしは、ああいうの嫌いだから」
「ああいうのって?」
「ほら、アカリにこの刀を売りつけた人のことよ。無理矢理売りつけて、それに暴力まで...」
「見てたんだ...」
「...私ずっと刀に憑いていたからね」
「なるほど...そっか」
(あれ、だったらこの刀こと鉄屑って言ったの聞かれてるんじゃ...)
そしてミオは険しい表情から一変し、笑顔をみせこういった。
「まあ、それは切っ掛け」
「ん?」
「あたし、アカリの事が気に入ったの。その赤毛も青い瞳も、元気いっぱいなところも、好きになっちゃった」
これほどに真正面からはっきりとダイレクトに好きと言われたことが無かった私は、照れて思わず顔を背けてしまった。
「あ、ありがと...」
それを察したのかミオちゃんは背後から優しく抱きしめてきた。やわらけーなーおい。
「でも彼らも見る目ないわね」
「え?」
「この刀、使えるようにして売れば、おそらくは5億はくだらないのに」
「...」
私はそっと刀をアイテムボックスへ収納した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます