泥に広がる波紋

 なんとも奇怪な、そして不思議な短編集である。気がつくと泥に足をとられているような、ありえない波紋で泥をようやく認識しているような。そのくせ、数日前にまとまった雨が降ったこと自体は覚えているような。

 あたかもメビウスの輪のごとく、現実は非現実に、非現実は現実に繰り返し繰り返し点滅しながら進んだり戻ったり。

 そんな雰囲気が秀逸なホラーである。

 必読本作。

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