概要
☆各エピソオドは弍千文字程度と短めで、國電や市電の一区間で読み切れる仕様となつてをります。
<あらすじ>
狼男の異名を持つ青年がいた。髭面の毛深い者ではない。頬も額も首筋も、全身が剛毛に覆われている。自らの生い立ちも、苗字も知らない。そんな異形の者たちが、ドサ廻りの小さな曲芸団に集まっていた。怪力の巨人に骸骨男、蛭娘に小人の楽団…
戦前のある年の春先、大きな温泉街で奇妙な少女歌劇団と接触したことをきっかけに、曲芸団の芸人たちは数奇な運命に巻き込まれていく。希望か絶望か、吉兆か悪夢か。外国人形のような美少女は、意味ありげに笑った。
詩人・高橋睦郎さんの『畸型の舟』と米映画『フリークス(1932年)』に捧ぐ。
<一部読者様江>
あちら
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!その華たちは確かにその時咲いていた
この物語にでてくる人物は、良くも悪くも、美しくも奇抜でも、一芸をもって身を立てています。日々芸を披露し、拍手を浴び、時にはヤジも受けそれでも止まることなく、場所を変え芸に身を入れていきます。全てはただ、生きていくために。
ただ生きていくこと。その当たり前のことが難しかった時代。この物語の人物たちは、その時代に確かに生きていました。一人一人が様々な思いと生まれ持って背負った定めに翻弄されながらも、美しく華を咲かせ、逞しく生きぬきました。いまの時代でも、生き抜くことの難しさは変わらないのかもしれません。
この物語は、曲芸団の芸人たちが時には励まし合い、時には出し抜いたりと絆と溝を交差さ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!昭和初期の文学香り高く、サーカスの悲しみ。
舞台は昭和初期。小規模なサーカス団。
その名も深川曲芸団……おっと、曲藝團。そこの畸型(きけい)、大柄で怪力の男、骨と皮だらけの男、驚くほどデブな女、さらには……。
と、どんどん、サーカスの出し物に、読者は魅せられていくことになります。
見事な曲芸の数々。
でも、真実、観客が魅せられているのは、日常からかけ離れた、畸型の珍しさ……。
畸型、サーカス団として流れる日々。その哀しさが、丁寧に描かれていきます。
その妖しさときらびやかさ、そしてサーカスの一幕自体が、虚構の夢である昏さ。全てを描きだす筆力は圧巻。
しかし、物語はそれだけでとどまらず、人情や、ハラハラの冒険につながっていくのです…続きを読む - ★★★ Excellent!!!どうかこの物語が一人でも多くの方に届きますように
私は、好きな作品ほど最後に向けて読むのが遅くなります。
終わりたくなくて、一人だだをこねて、それでもやはり終わらせなければと、震える手で本を開く。
期待と、淋しさと。
勿体なくて、勿体なくて……。この作品は本当に読み終わるのが嫌だった。
ごめんなさい、レビューにならないかもしれません。
ずっと「どんなレビューにしよう」と考えていたのに、今の私の胸いっぱいなこの気持ちを上手く表現できそうにありません。
他の皆様が素晴らしいレビューをなさっています。
そこに甘え、私は感情に任せて書かせていただきます。
はじめ、作者様はよくこの『畸型』というテーマを選ばれたなと、そこに感服致しまし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!昭和初期のレトロな雰囲気が最高!
舞台は昭和初期、旅する曲芸団の一座の物語。
ある出会いをきっかけに、曲芸団の畸形たちが、事件に巻き込まれていきます。
まず目を引くのが、とにかく美しい筆致と描写。
圧倒的な筆致により創り出される、昭和初期のレトロな空気感が作中全体に漂っています。
その時代にタイムスリップしたかのように、あるいはドラマや映画を見ているかのように、作品の世界に没入できますよ!
もちろん時代考証もしっかりされていますし、難しい部分には注釈もつけて下さっています。
古風というよりも、とにかくお洒落で濃厚な作風だと私は感じました。
この雰囲気、個人的に非常に好きです。すごく引き込まれます。
紙の本でじっくり腰を据え…続きを読む - ★★★ Excellent!!!◎昭和初期を舞台に、奇形の者たちが集まる曲芸団で起こる事件とは
時代背景、キャラクター、ストーリーどれをとっても物凄く読みごたえがあります。
しっかり資料を調べて書かれており、破綻のない作劇も素晴らしい。
また文体も往時を匂わせ風情があります。
物語は曲芸団の公演から幕を開けます。
妖しく見慣れぬ舞台に、一気に引き込まれました。
それから団員たちの人間模様、うごめく陰謀、ささやかな恋心などが描かれて行きます。
全ての登場人物が生きており、体温を持った人間として描写されます。
矮小な陰謀と見えたものは、やがて驚くほど危険な展開へと転がって行きます。
とにかくお勧めしたい名作。
「異形の者でありながら美声の歌手」という主人公の設定が私のツボに刺さった…続きを読む - ★★★ Excellent!!!裏の世界の狡猾な罠に巻き込まれた曲藝團員たちの、手に汗握る冒険譚!
ホラーでもあり、身体的特徴をそのまま自らの芸とした誇りある芸人たちの群像を描いた映画でもある『フリークス(米・1932年)』に捧げられているという本作。
昭和の初期、畸型たちのうごめくあやしき深川曲芸団もまた、そんな芸人たちが身を寄せ合い、芸を競う場所。
ここでは世間では忌み嫌う人もあるそれぞれの身体的特徴が才能の一部。れっきとした芸人の世界。
だがその世界。より高いギャラのため誰かを出し抜くのは日常茶飯事。主人公である狼男・章一郎も、ふとした出来心から危険な罠にはまってゆく……
現在第十二章の冒頭ですが、とある事件に巻き込まれた彼らの冒険譚から目が離せません。このレビューも、完結後に追…続きを読む - ★★★ Excellent!!!狼男は夢を見る 異形の者が集まる曲芸団の運命は如何に
昭和初期の日本、ドサ廻りの小さな曲芸団には異形の者が集まり、身体的な特徴と一芸を見世物にしていた。
日本中を旅回り、寝食苦楽を共にする彼らの日常を情緒的な文体で描いた小説です。
主人公の狼男章一郎は見た目は毛むくじゃらで恐ろし気でありながら、繊細で気弱な青年です。生まれも育ちも幸薄い章一郎は美しい歌声を持っていました。彼が抱く夢と葛藤は余りにも人間くさくて、生々しい。そして劇団員達もまた、一人一人が各々の欲望や希望に突き動かされていきます。
そんな彼らが思いも寄らぬ事件に巻き込まれていきます。
彼らを待ち受ける運命はいかに・・・。
読めば戦前の空気を感じる物語、おすすめです。