どうかこの物語が一人でも多くの方に届きますように


私は、好きな作品ほど最後に向けて読むのが遅くなります。
終わりたくなくて、一人だだをこねて、それでもやはり終わらせなければと、震える手で本を開く。

期待と、淋しさと。

勿体なくて、勿体なくて……。この作品は本当に読み終わるのが嫌だった。


ごめんなさい、レビューにならないかもしれません。
ずっと「どんなレビューにしよう」と考えていたのに、今の私の胸いっぱいなこの気持ちを上手く表現できそうにありません。

他の皆様が素晴らしいレビューをなさっています。
そこに甘え、私は感情に任せて書かせていただきます。


はじめ、作者様はよくこの『畸型』というテーマを選ばれたなと、そこに感服致しました。
時代考証や文章技術や、目を見張るものは多々ありますが、私はこの難しいテーマを見事物語に仕立てあげたその手腕に脱帽と憧憬の念を禁じ得ません。

そして読み終わりました今、ただ一言、「人間力だな」と。

登場人物とは、すべてがその作者様の分身です。
主人公も、悪役も、名前のない脇役でさえも。

この作品の登場人物たちの、なんと豊かで面白みがあって、温かいことか。
細部に血が通っているのです。生きているのです。
私はそれが嬉しく、胸が締め付けられるほど感動致しました。

物語とはかくあるべし、などと偉そうなことは言えませんが、物語を紡ぐすべての方にお薦めしたい作品です。

この作品との出会いの場であるカクヨムにも感謝を。


(角川文庫さん、ぜひ書店に……)

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