第14話 やっぱり、そうか・・・

 大槻青年は、思うところを淡々と、しかし見事なほどに忌憚なく、述べていく。


 それはいいのですが、一方であの先生には、どこか、事なかれ主義的に物事を進めていこうとされる要素も見え隠れしているように思えてならんのです。

 前例に従って、それでどうにもならなければ、小細工というかガス抜きというか、そんなものでも施してこの地を運営していければよい。

 そんな印象さえ受けます。

 さすがに年季の入っておられる方ですから、適当なことをしてお茶を濁してといったことを正面切ってやるような真似はされません。

 ですが、そんな手法は目先通用したとしても、長い目で見れば必ずや大きな問題点を起こしかねないリスクをはらんでおります。

 これはさすがに人前では申せないところですけど、長年にわたって教師として、国から俸給をもらって暮らしてこられた方ですから、どこかで、給料は天から降ってくるものとでも思っておられるような節さえ、私には感じられます。

 本当にこれは言いにくい話ですけど、正直、東先生のような人物には、私は、死んでもなりたくありませんね。


 静かに話し始めた青年ではあったが、話すにつれ、少しずつ自らの言葉に酔ってきたのか、テンションが上がってきているのが、老園長には手に取るようにわかる。

 対手の老園長、人生の大先輩でもある東氏の批判を繰り広げる若者の弁を、さすがに微笑を浮かべるわけではないものの、かといって怒りを見せるわけでもなく、淡々と、その主張内容を受け止めている。


 少しばかりの沈黙の後、老園長は、口を開いた。

 特に怒りも嘆きもしていない模様。

 最初に彼が口に出したのは、こんな言葉であった。


「やっぱり、そうか・・・」

 

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