第4話 朝礼は終わり、いざ、園長室に。

 東園長は、屋根付の自転車置場に自転車を置き、よつ葉園の事務所に入った。

 事務所には、森川一郎園長や大槻和男児童指導員、それにベテランの山上敬子保母らも出勤している。


「おはようございます」

 誰ともなく、声がかかる。

「おはようございます」

 東氏もまた、それに応える。そして、出勤簿に自らの印を押した。

 やがて、住込みの部屋や子どもたちの暮らす部屋などから、若い保母たちがやってくる。彼女らもまた、自らの出勤を証明する三文判を、各自押していく。


 いよいよ、この日の業務が始まる。

 朝礼は、いつも通りで9時15分から。

 毎月一回、第一月曜日はこの時間から職員会議が開催され、場合によっては夕方までかんかんがくがくと続くときもあるが、いつもはこの朝礼だけで、1時間もしないうちに確実に終了する。

 とはいえ、これを省くわけにもいかない。

 前夜からの当直者からの報告事項を共有する必要もあるし、また、全体で把握しておくべき事案もあるため、この朝礼は日曜祭日であれ、必ず開催されている。

 もっとも日曜や祭日は園長らが公休で休みのこともあり、基本的には30分もあれば終わる。

 この日はそもそも月曜日でないため、朝礼は1時間もしないうちに終わった。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「はて、昨日のあの電話の件は、一体全体、何だったのであろうか?」


 東副園長は、森川園長に尋ねようと思っていたその矢先。

 先方から、声がかかった。


「昨日の話じゃが、東先生、ちょっと、園長室にご足労願えませぬか」


 老園長は、幾分若い副園長を園長室へと招いた。

 そのことについて、特に何かを感じてとがめだてする職員は、いない。

 森川園長に引続いて、東副園長もまた、園長室へと入っていった。


 年老いた幹部職員らのために、若い保母の一人が気を利かせて、園長室までお茶を入れた湯飲みを二つ、持ってきてくれた。


 頃合いをみて、老園長が昨日の「大発見」のことについて、静かに語り始めた。

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