世紀の大発見!?

与方藤士朗

プロローグ ~深夜の電話

第1話 深夜の電話

ボーン!


 ときは、1970年。和暦で昭和45年4月中旬のある夜。

 東航氏宅の振子時計が、一度、時を告げる音を発する。その時計の短針は、10と11の間、長針はちょうど、6の文字の頭をまっすぐ突き刺す位置に来ている。

 この家の主・東航氏は、当年とって60代前半。元小学校教諭。

 校長まで務めたが、教育委員会のあっせんを受け、岡山市津島町にある養護施設・よつ葉園で副園長と事務長の肩書を持つ児童指導員として再雇用され、この春で4年目に。

 学校経営から養護施設経営へとその仕事を変えたが、その生活にも慣れてきた。

 もっとも彼は副園長の肩書をはじめから持っていたため、基本的には宿直などの業務はなく、ほぼ学校長時代のような勤務体系で、よつ葉園という名の養護施設に自宅から自転車で通っていた。

 この日東氏は、遅くまで起きて、昭和44年度決算と銘打たれた書類の束をチェックしていた。

 年度はすでに、今月初日に変わっている。


ジリリリリン ジリリリリン ジリリリリン


 ほどなく、東邸の黒電話が鳴り始めた。この家の電話は、どんな時期であれ、こんな時間に鳴ることは、ない。特に恨みを持たれていると思われる節もない。それに、特に緊急の連絡と称して電話が鳴ることさえも、まずない。

 かつて何かの折に深夜に電報が来たことが1度だけ、あるにはあった。

 だが、このような時間に電話が鳴った経験は、なかった。


 果たして、誰からであろうか?

 とりあえず、電話をとってみよう。

 東氏は、電話口に出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る