2-2
ぎいい、と
支えているほうの男はローブをつけ、
怪我をしているもう一人は、黒い上等の布に銀糸で見事な
「どうぞ、そこに……」
言いかけてから、キャナリーは
「ごめんなさいね、ずっと留守にしていたから、部屋が埃だらけなの」
「いえ、どうかお気になさらずに。助かります」
「お
「すま……ない。世話に、なる」
怪我をしているほうの青年は、息もたえだえに、苦しそうに言った。
身なりからして二人とも身分は高そうだが、こんな状態なのに低姿勢で謝罪をできるならば、きっといい人だとキャナリーは確信する。
(それにしても、
キャナリーは、
「待たせてばかりで悪いけれど、水を
近くの泉まで行って水を汲み戻ってくると、神官風の青年が、怪我人をベッドに横たえ終えたところだった。
「さあ、こっちの椅子は
ベッドの横にたたずむ神官風の青年に、キャナリーは
「ありがとうございます。では、使わせていただきます」
「二人とも、この辺りの方じゃないわよね? よかったら、名前を聞かせてもらえない? なんて呼べばいいのか、わからないもの。私はキャナリー」
もうキャナリーは
神官らしき青年はまず、横たわった青年を手のひらで示して言う。
「失礼しました。こちらから名乗るのが
「お国はどこなの? きっと旅の方でしょう?」
キャナリーがそう言ったのは、衣類の
特に怪我をしている青年の瞳は、驚くほどに濃い、真夏の空のような青をしている。
「はい。馬車で半月ほどの国から参ったのです」
「そうだったの。長旅の
キャナリーは言って、久しぶりに生まれ育った家の
そして、ケホケホと
(うう、やっぱりこっちも、すごい埃。それに、
キャナリーは鞄からハンカチーフを取り出して、それで口元を
こちらもあちこち、からくりが仕掛けてある戸棚を開き、中から塗り薬の
室内には独特の、ハーブの匂いが立ち込めていた。
ラミアは何十年もここで薬草を調合し、薬を売って暮らしてきた。
そのため台所には、数カ所のかまどに
キャナリーは
塗り薬が出来上がると
「ひどい怪我ね。いったい、何があったの? さあ手をこちらに。手当をするわ」
「お、お待ちください。そのように気安く
なぜかアルヴィンがキャナリーを止めようとしたが、ジェラルドがそれを
「よい。治療をしてくれるというのだ。ありがたく、好意を受けよう」
「はい。ジェラルド様が、そうおっしゃるなら」
(子爵家で、貴族は
そんなことを考えていると、ジェラルドは痛みに汗を流し、
「気分を害したなら、すまない。このような
全然、とキャナリーは微笑んで首を左右に振る。
「こう見えても私、少し前まで貴族として暮らしていたの。そこではメイドと対等に話しているだけでも
言いながら、キャナリーはジェラルドの服を脱がしにかかった。
するとかなりの細身だと思っていたのに、しっかりと筋肉のついた
だが、あちこちに
「もしかして、きみが薬を調合したのか?」
「そのとおりよ。任せて、薬作りには自信があるの」
話しながらてきぱきと、薬を塗り、
「貴族として暮らしていた、というのはどういうことですか?」
背後に立ち、治療を見守っているアルヴィンに
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