2-4
外へ出ると、もうとっくに日が
戻ると
「ありがとう。こんな、誰ともわからぬ者たちのために、服を
治療を終え、再び横たわっていたジェラルドに、キャナリーは振り向いて微笑んだ。
「何言ってるの。人を思うは身を思う、って言うじゃない。貴族か商人かわからないけれど、あなたたちは身なりからして本当は、偉い人じゃない? それなのに、人をアゴでこき使わないなんて、良い人ね。私、こんなふうにまともな人たちと会話をできるのが久しぶりで、それだけでも
キャナリーはちらりと、旅行鞄と台所を見る。
「もしかして、お
「お構いなく。勝手におしかけてきた、我々が悪いのですから」
アルヴィンが
「多分、その傷だとジェラルドさんは、数日は
残りわずかな、子爵家からの
でもそれならば、この身分の高そうな人たちの口には合うだろう。
「もちろん、いいが。キャナリーさん。きみの食べる分は、あるんだろうな?」
「無理をしなくてもよいのですよ。金貨も銀貨も持っておりますから、それでお
「お金なんかいいから。そんなことより怪我人は、早く治すことだけ考えるべきよ。それからベッドはひとつだけで、私は屋根裏に寝るから、悪いけれどアルヴィンさんは椅子で寝てくれる? 毛布を貸すわ」
「椅子で
「謝る必要なんか、全然ないわよ」
しきりに
「その代わり、ジェラルドさん。
「うっ……ぐ、っう、ぐぐっ」
煎じ薬の入った木のボールに口をつけ、ジェラルドはキャナリーが言った意味を理解したらしかった。
この煎じ薬は、傷による発熱や化膿を
たとえるならば、
ジェラルドは治療の時より、ずっと苦しそうな表情と声で、なんとか少しずつボールの中身を飲んでいく。が、途中でとうとう音を上げた。
「な、なんだ、いったいこれは。臭いからして
「なんだ、ってお薬よ。効く薬ほど舌はいやがる、ってことわざがあるでしょ」
言ってキャナリーは、ジェラルドの高い鼻を、むぎゅっとつまんだ。
「うぐっ、なっ、何を」
「キャナリーさんっ! ジェラルド様の尊いお鼻に、何をなさいます!」
「私が子どものころ、ラミアはよくこうして、薬を飲ませたものだわ。さあ、もっと、ぐいっと飲んで」
うう、とジェラルドは顔をしかめたが、
間近で見ると
ダグラス王国の王太子とはまるで違い、頬から口元は
その彼が子どものように、必死に薬を飲んでいるのを見るうちに、キャナリーは
「ま、まだか。全部でなくてもいいんだろう?」
「頑張って。決まった用量を飲まないと、治りが
「そ、そうか。わかった。……すべては、俺の身体のためにしてくれていることだからな」
ジェラルドが
彼の形いい
「よくできました! それじゃあケーキと、お茶を用意するわね」
キャナリーは、空になった木のボールを持って台所へ行きながら、まるで自分が薬を飲み終えたようにホッとしていた。
それからもう一度湯を沸かし、一番上等の、もったいないとラミアがなかなか使おうとしなかった、とっておきの茶葉を取り出した。
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