第二章 森で皇子を拾いました
2-1
「ああー!
ぐーっとキャナリーは両手を上げ、
どうやら自分で思っていた以上に、貴族社会での暮らしはキャナリーを
「でもまさか私の歌で、
それを考えると落ち込むより、むしろ笑ってしまった。
ともあれすべては関係のないことだ。
キャナリーは
(貴族向けのお料理やデザートが、もう食べられないことにだけは、正直、ちょっとだけ未練があるなあ。でも久しぶりのここでの食事も楽しみ)
もう旅行
どの辺りの樹にどんな果実がなり、キノコの群生地があり、
キャナリーは大好きな森へと帰ってきた喜びで、いっぱいだった。
窮屈な
いずれは着ている外出着もろとも、どこかに売りに行こうと思っているので、捨てたりはしない。
すう、と息を吸い込むたびに、懐かしい緑の
と、ちょろちょろと、枝の間を跳ねながら、こちらへ近寄って来る者たちがいる。
「あら、お
それはふかふかとした毛の長い、この辺りにたくさん住んでいるリスだった。
「ふふ、耳をかじっちゃ
二
「キューン!」
「あなたもお出迎えに来てくれたの。久しぶり、元気にしてた? 前に
駆け寄ってきたのは、ホウキのような立派な
頭を
「今日は何も持ってないけれど、ジャムを作ったらご
実はもうラミアがいないことに
ところが、みんなで懐かしいラミアの家に向かっていると、急にキツネが足を止め、その耳がぴくっと動いた。
サッと
(何か、いるみたい)
キャナリーは気を引きしめて、
「……です、
「ああ、そのようだな」
そっと観察すると青年が二人、ラミアの家に向かって、よろよろと歩いていた。
どちらも長身だが、一人は一人に肩をかし、今にも
この辺りでは見たことのない二人の
(遠くから、旅をしてきた人たちかな。
そうして見つけたラミアの家を、
「あっ……大変!」
気付いたキャナリーは思わず木陰から飛び出して、彼らに
「ドアに
こちらの声に、青年の一人が驚いたように
そして
「この家の
なおも青年は、ドアに手を伸ばそうとする。
「ドアに触っちゃ、ダメええ!」
叫びつつ、キャナリーはドアに向かって走り出したのだが。
(間に合わない!)
えいっ! とキャナリーは思い切り、彼らに向かって鞄を投げつけた。
鞄が弱っているほうの男に当たり、うっ、と
「何をするのですか! こちらは礼を
「違うのよ! 少し
やっと追いついたキャナリーは、ハアハアと息を切らしつつ、二人を少し下がらせた。
ドアを二度、ガタガタと右に動かし、それから同じように、二度左に動かす。
そして、ふう、と
「
目を丸くしている青年二人を、キャナリーは家に招き入れた。
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