1-5
***
翌日、日の出とともに歌姫四人は、神殿の地下にある、神聖な
魔法を覚醒させるための、神聖な目覚めの儀式がとり行われるのだ。
おしゃべりなレイチェルたちも、さすがに緊張した顔をして、
ここにも
「では、順番に座って、これを」
周囲を神官が取り囲み、不思議な
それぞれの手には大司祭に
「中に入っている黒い液体は、ダグラス王国秘伝の魔力覚醒の秘薬でございます。さあ、恐れずに、一息にお飲みください」
キャナリーは注意深く、銀杯の中身を見つめた。それから、くいっと一気に液体を
(あら。爽やかな香りで、ちょっと甘くて、思ったよりずっと美味しい)
と、ふいにレイチェルが、
「ああっ……! 何かしら、この感じ。まるで、
「くらくらしますわ。目の前が、ぼうっとなって」
「
小さな銀杯を抱くようにして、ぶるぶると身体を震わせている三人を、キャナリーはポカンとして見てしまった。
(あれ? どうして? 私、全然、なんともない。……もしかして魔力があるというのは、何かの間違いだったりして)
魔力を望んでいたわけではないが、披露会で何も起こらなかったらどうしよう。
キャナリーは神聖な魔法陣の上で、
ざわざわと、集まった貴族たちは客席で期待に
披露会の会場は、何本もの太い柱に支えられた屋根のある
壁はないので外にまで、歌声は
一段高くなっている舞台前には、
舞台よりも高くなっている場所には、王族とその親族である公爵家が
舞台袖では、キャナリーを含めた歌姫四人が、
間もなくラッパが
レイチェルたちはキャーッと色めきたち、舞台袖から顔を
「ああん、素敵。なんて気品に満ちたお顔立ち」
「はしたなくてよ、エミリー様。でも本当に、なんて
「こうなったら自分が聖女であると望まざるをえないですわね」
もう二度とお目にかかることはないかもしれないので、キャナリーも一応ご尊顔を拝んでおいた。
王太子の背後には摂政である公爵が立っているが、国王陛下夫妻のお出ましはない。
最近、国王陛下の体調が思わしくなく、王妃殿下はつきっきりで看病している、との話だった。
「こたびは我が誕生日をともに喜んでくれて、余は嬉しい。さあ、聖女の誕生を
王太子の言葉と、それに対する観客の
まず最初はブレンダが舞台の中央に上がった。
固唾を呑んで観客が見守る中、
歌唱団の令嬢がソロで歌うのを聞くのは、これが初めてだ。
(あら。なかなか
キャナリーは
観客席の後ろの方には、王宮から招かれた芸術家や大商人、有名な
観客席の青年貴族たちは、それぞれ手に三本のバラの花を持っていた。
歌が終わった時、友達としてお近づきになりたい、と思った場合には白いバラを。
家族ぐるみで、結婚を前提にした正式な付き合いを申し込みたい、という場合には、黄色いバラを舞台に投げ入れることになっているのだ。
もしも聖女でなかった場合、投げられたバラの中から、歌姫は相手を選べることになっている。
もちろん、今回の歌姫の中に聖女がいなくとも、必ず一人は妃に選ばれるので、その場合は王太子の指名が最優先になる。
「まあ。なんだか上から、白いものが降ってまいりましたわ」
「おお。これは花びらじゃないか」
わあっ、と
ブレンダ自身も
花びらは床に落下したり、誰かの手に
歌い終えると、ブレンダは静かに頭を下げる。
すると客席から二本の白いバラと、一本の赤いバラが投げ入れられた。
ブレンダはそちらに向かって、
『国を護る』魔法ではないため、確実に聖女ではないのと、王太子が無反応だったので妃に選ばれる可能性は低いと思っているのだろう。
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