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***
「今日はいよいよ、歌唱団員の中から
「わたくしも
ここは王宮の一角にある大広間。
そこに
その
(昨日食べたジャム入りのケーキ、果肉がじゅわっと口の中に広がって、
ここダグラス王国では、王太子が十八歳になる一年前に、国中から若い
なぜなら王の統治する一世代につき一人、『歌によって国を
この世界では王族は必ず
そこで王立歌唱団が設立された。
歌唱団での練習で魔力持ちを
歌姫の使う魔法の中に、『国を護る』に
しかし、聖女は身分に関係なく生まれるため、必ずしも歌唱団の中から見つかるわけでもない。だからこそ、歌唱団から無事に
歌唱団で見つからなければ、国中を
ゆえに、神話のような存在になっていた。
そして本日は、この世代の歌姫が発表される日であった──。
「まずは歌姫に選ばれることが、王妃への第一歩ですわね」
「お妃に選ばれなかった歌姫も、高位貴族に
令嬢たちの関心は聖女よりも、いかに良い
キャナリーはその輪には入らず、
とある事情によって令嬢になったキャナリーにとっては、ここにいること自体が
よって、
(くるくる巻いたクリームコロネに、キラキラしたパート・ドゥ・フリュイ。あれは何層にも重なったミルクレープかしら……
キャナリーは、そっとお腹を押さえる。
「
はっとして顔をそちらに向けると、白い髪と長いひげを持つ老人──イズ―ナ
ざわめいていた広間は、あっという間に静まり、令嬢たちは一列に横に並ぶ。
その前に大司祭とお付きの者が立ち、場は緊張に包まれた。
ごほん、と大司祭は
「さて。ご令嬢方もご存じのとおり、我が王国では代々、
キャナリーも
「ただしその魔力は声によって現れることも、ご存じのとおり。であれば、一見しただけでは、誰が聖女だかわかるはずもありませぬが」
大司祭は
「魔力に感応し、色づく
まあっ、と黄色い声があがり、令嬢たちはざわめいた。
大司祭は言葉をきり、キャナリーたちをぐるりと眺める。
「お静かに願いますぞ。歌姫に選ばれるのはその方ですが、歌唱団で一年間練習してきたのにも意味があります。
「ゴーレム……」
「ああ、いやだ。その名前を聞くと、ゾッとしますわ」
令嬢たちは、
ゴーレムというのは国をおびやかすほど
大司祭は一呼吸おいて、重々しく続けた。
「さらには歌姫たちが、
そわそわしている令嬢たちをよそに、キャナリーは一人、冷静に考えていた。
(なるほど。じゃあ、この先も歌唱団員として歌える機会はありそうね。よかった。歌姫にもお妃さまにも興味がないけれど、食べることの次に歌は好きだもの)
大司祭は、キャナリーたち一人一人に、じっくりと視線を注いで言う。
「さて、ではこれより、発表いたしますぞ。
誰かがゴクリと息を呑む音が聞こえ、ピンと室内の空気が
「まずは……レイチェル・ニコルソン
名前を呼ばれた令嬢は大喜びし、呼ばれない令嬢は青ざめていく。
そして、最後の一人の名前が呼ばれた。
「キャナリー・マレット子爵令嬢。以上の、四名でございます」
「えっ……! えええええ? 私!?」
キャナリーは目を丸くして、自分を指差してしまったのだった。
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