第101話 101
クリスの問いに、あり得ない答えが浮かび上がり琉架はそれを振り払うかのように軽く頭を振った。
「クリストファー メイフィールドがヴァチカンから出奔した時は二十四歳で……、あれから、四十年経っている……」
目の前に居るのが本当に四十年前にヴァチカンから出奔した人物なら、現在は六十四歳のはずである。
「せっかく付けていただいた名前ですから、今までそれを使っていましたが、今日限りで止めることにしましょう」
混乱に囚われている琉架を見つめながら、クリスは更に言葉を続ける。
「私の本当の名前はChristian Rosenkreutz」
信じられない名前を口にしたクリスに、琉架は思わず目を見張る。
「それこそ……まさかだ……」
「ヴァチカンは私のことを何と呼んでいましたか?」
嬉しそうにクリスが尋ねた。
「……CRC……」
確かに、CRCとはクリスティアン ローゼンクロイツの略称である。単純に、ヴァチカンから出奔した忌みなる人物として、その名を口にするのも汚らわしいと略称で呼ばれていた事を不思議に思った事は無かった。考えてみれば、クリストファー メイフィールドの略称にしてはおかしすぎる。最初のCとクリストファーの頭文字しか合っていない。
「一体、どういう事だ……? それが本当なら、1484年にその人物は亡くなっているはずだ……」
亡くなったときでさえ百六歳という年齢だったはずだ。なぜ自身とそう変わらない年齢の姿なのか、琉架は疑問の解決を求めるがまともな答えは出てこなかった。
「琉架さん……?」
二人の会話をまるで理解出来ない兼続が琉架に説明を求めようとした。体調が落ち着き、普通に立ち上がった兼続は琉架を見つめる。混乱している琉架は、それに答えることはなかった。
「兼続」
名を呼ばれ、兼続は反射的に視線を移した。
「あの。すみません。俺、何がなんだか分からないんですけど……」
体調が戻り、落ち着いた兼続は素直に疑問を口にした。
「これから、ゆっくりと説明します」
そう答え、クリスは極上の笑みを浮かべると兼続に向かって手を差し伸べた。
「待て!」
琉架の制止が突然響いた。
「お前がCRCなら丁度良い」
そう言い、琉架はゆっくりと腕を上げる。
「Angelus」
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