第18話 18

 兼続の言葉に反応し、二匹は嬉しそうに尾を振った。千切れんばかりに尾を振りまくる二匹から洋服ダンスに視線を移し、着替えを取り出す。せわしなく部屋の中を動き回りながら、二匹は兼続の支度が終わるのを待った。


「お待たせ」


 そう二匹に向かって言うと兼続は廊下へと向かう。待ってましたと言わんばかりに、二匹はその後に続いた。


 庭に出た兼続は、早朝の爽やかな空気を思いっきり吸い込むと、まだ少し残っていた眠気もそれで吹っ飛んでしまった。


 犬たちにハーネスとリードを付け、兼続は散歩へと向かう。同じように犬の散歩させる飼い主達と挨拶を交わし、いつもと変わらないコースを進む。途中から微かな違和感を感じ始めるが、特に変わった様子も見受けられず、気のせいだと思い散歩を続ける。


 散歩を進めるにつれ、何かおかしいと兼続は足を止めた。何がおかしいのか、辺りを見回し、普段と何が違うのかを考える。


 妙に静かで人の気配が何も無い。いくら早朝とはいえ、ここまで静かなのも変だと兼続は気が付いた。急激に気味の悪さが兼続を襲い、逃げるように小走りに走り出す。不気味さに相まって、何かが追いかけてきているような気がして、小走りだった足が無意識に思いっきり駆け出す。


 突然、リードを持った手が思いっきり引かれ、勢いの付いていた兼続はそのまま倒れ込みそうに成った。


「シロ? クロ?」


 体勢を立て直した兼続は二匹へと視線を向けた。二匹は揃って一点を見つめ、何かを警戒しているようであった。


「何? どうしたんだよ?」


 二匹の視線の先を辿るが、そこには特に何も無く、兼続は再び二匹へと視線を戻す。その途端、背後に何か嫌な気配を感じ同時に二匹が唸りだした。


 何かが背後に居るのは嫌と言うほど伝わって来る。しかもそれからは身の危険を覚えるような気配を感じ取れた。振り返って確認をするべきなのか、それともこのまま何事も無かったように立ち去るべきなのか、兼続は選択を迫られた。


 兼続にはかなりの大きさの大型犬が二匹いる。普通ならわざわざ危険を冒してまで襲ってくるという事は考えられない。だが、背後に存在するものは、そんなこととは無関係に思えた。


 ゆっくりと背後で何かが動く気配がし、二匹の犬たちは兼続を守るように立ちはだかる。兼続は血にしたリード引っ張るが、二匹はかたくなにその場か動こうとしない。まるで、その場から動いてしまえば兼続に危害が加わるとでも言わんばかりである。

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