限界ラオタ、コールする
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」
腹が、熱い。煮えたぎっている。
≪ドッジボールでナイスキャッチ、ただしボールは溶岩です≫みたいなっ!
転生からの即死とか、
あ、目の前がかすんできた。
地面が揺れる。
空がひっくり返る。
なんかすごい既視感あるんだけど。
「ニンニク入れますか?」
これは……走馬灯ってやつか。
前世で最後に食ったラーメンの記憶だ。
もちろん、俺はコールした。
「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ!」
その時、不思議なことが起こった。
温かな光に包まれた俺の身体はすっかり元通り。
それどころか、身体の奥底から力があふれ出してくる。
今なら忌々しい中学の同級生、山岡のヤツにも勝てそうな気がする。
「GOAHOOOOO!」
黄金のクマさんが吼えた。
動物の言葉はわからないけど、めっちゃ怒ってる感じは伝わってくる。
そうだ。
目の前にいるのは、俺をサンドバックにしてくれやがった山岡じゃなくて黄金のクマさんだった。
山岡には『勝てそうな気がする』と思ったけど、黄金のクマさんは無理だよ。
だってクマだもん。
人間が素手でどうにか出来る相手じゃないって。
黄金のクマさんが俊敏な動きで襲い掛かってくる。
俺は反応することも出来ない。
いや、ホントにメッチャ早いんだって。マジ無理ゲーよ。
黄金のクマさんの研ぎ澄まされた爪が、再び俺を襲った。
しかも、今度は頭を狙ってきやがった。
腹じゃ死ななかったからって、次は
その時、不思議なことが起こった。
(10秒ぶり2回目)
黄金のクマさんの爪は、俺の頭にヒットする手前でなにか白いものにボゥンと弾かれたのだ。
この白いもの。俺には見覚えがあった。
「アブラ……なのか……?」
そうだ。
最後に食べたあのラーメン。
野菜の山を彩っていたドロドロのアブラブロック。
アイツらが……俺を守ってくれた!?
「GOAHOOOOOOOOOOO!」
黄金のクマさんが、発狂したかのような雄叫びを上げた。
おちおち感動もさせてくれねぇ。
繰り出される爪の連撃。
それを、ことごとく防いでくれるアブラブロック。
しかし、頼みの綱であるアブラブロックが少しづつ薄くなっている。
さすがに俺も気づいた。
これはシールドとかバリアとか呼ばれるバフ効果だ。
ゲームではこういう効果は、効果時間を終えるか、耐久量を超えるダメージを受けたら消える。
消える前に、この戦いを終わらせなくてはならない。
逃げるか?
いや、熊の走るスピードは車と同じくらいの早さだって聞いたことがある。
俺なんかじゃ追いつかれてぶん殴られて、今度こそ異世界人生終了だ。
なら……倒すしかないじゃないか!
俺は腹をくくった。
クマの弱点ってどこだっけ?
鼻だっけ?
眉間だっけ?
有名ボクシング漫画に描いてあったんだけど。
ああ、思い出せない!
「わああああああああ!」
俺は拳を突き出し――あ、やべ、握ってなかったわ。
俺はひらいた掌を黄金のクマへと突き出した。
押し出しの次朗だ。
なにかゴワゴワしたものに触れた感触。
それは一瞬だった。
花火が打ち上がったような、とても大きな音がした。
いつのまにか閉じてしまっていた両目を開くと、黄金のクマさんの姿がどこにも無い。
「あれ? アイツどこ行った?」
追いかけるメリットもないし、いなくなったなら、それはそれでいいか。いいよね?
「たすかったあ」
いや、今回ばかりはマジで死ぬかと思ったね。
ついさっきラーメン食って死んだばっかだけど。
【スキルが解放されました】
「うおっ!! びっくりしたっ!」
聞き覚えのあるアナウンス。
そう、転生するときに『タイムアップです』とか言ってた、あの声だった。
【スキルリストを表示します】
──────────────────
ジロー=ヨシムラ
固有スキル『ラーメン』
☆アクティブスキル
・ヤサイ
体力を回復する
・ニンニク
スタミナをUPする
・カラメ
攻撃力をUPする
・アブラ
シールド効果を付与する
・マシマシ
固有スキルの効果を4倍にする
解放条件:はじめて『コール』する
──────────────────
なるほど、なるほど。
これが、かの有名なステータス画面。
異世界転生したって実感が湧いてきたね。
レベルとかステータスとか、そういうのは無いんだろうか。
【ありません。にんげんだもの】
ゲームじゃねぇんだぞ、ってことなんだろうけど。
それを言ったらおしまいなんじゃないか。
まず、お前の存在の是非が問われるぞ。
人間は頭の中に直接アナウンスが流れたりしないからな。
まあ、いいや。
とりあえず固有スキル『ラーメン』がヤバい。
間違いなくチートスキルだよ。
界王様ウソつかない。
これは俺しか勝たん。
ん? あれあれ?
いま気づいたんだけど、新しい俺ってば、ちょっと瘦せてねぇ?
ワガママボディがキュッと引き締まった感じがする。
街に行けば鏡くらいあるかな?
§ § § § §
「なんなの……あのバケモノじみた強さは」
少女は自分の目を疑った。
この森には木の実を拾いに来ただけだ。
そこで思いがけないものを見てしまった。
自分とさほど歳の変わらないひとりの青年。
一度は腹を裂かれて死にかけた彼は、聞いたこともない詠唱のあとゾンビのように復活し、
ゴールディ・プゥは、ずいぶん離れた岩山にめり込んだ。確認したわけじゃないけど、多分死んだと思う。
いろんな冒険者を見てきたけれど、ゴールディ・プゥがソロの冒険者に瞬殺されるところなんて初めて遭遇した。
「あの人なら……村を救ってくれるかもしれない」
気がつけば、少女は彼を追いかけていた。
🍜Next Ramen's HINT !!
『おっぱい』
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