限界ラオタ、初めてのスタンピード
「大変!
バタバタとカウンターに出てきたのは別の受付のお姉さんだ。
わかりづらいから、目の前にいるのが受付さん1号、新しくきたのが受付さん2号、ということにしよう。名前知らないし。
「スタンピード!? 大変! 冒険者登録なんてやってる場合じゃないわ!」
おぃおぃおぃおぃ。
きみ、いま何つった?
『冒険者登録なんてやってる場合じゃないわ!』とか言わなかった?
スタンピード? だっけ?
なんか大変そうなのはわかるよ。うん。
でもさぁ、冒険者登録してる本人を前にして言う言葉じゃないと思うなぁ、ぼかぁ。
出るとこ出るよお?
そんな俺の心の声が届くわけもなく。
受付さん1号は黙々とデスクから木の板を取り出し、ペンでサラサラとなにやら書きはじめた。
「お待たせしました。こちら
そう言って、木の板を俺に渡す。
つまり、さっき書いてたのは俺の名前だったってわけか。
それはお手数をお掛けしました。
『ズロー・ヨスムラ』
誰がズローで、ヨスムラだよ。
訛りがきつすぎんだろ。
さすがにこれはダメ。
ちゃんと文句言ってやんないとな。
「あ、あの……これ名前が――」
「等級は10段階の一番下、
うわっ。なんか、めっちゃ早口だ。
口を挟むスキがない。
「クエストはそちらのクエストボードに貼り出してます。クライアント指定の期限がある代わりに報酬が高めになっています。常設の危険モンスター討伐リストはあちらのテーブルに置いてあります。こちらは期限などなく、指定の討伐部位ひとつにつき一匹の討伐を認め、討伐数に応じた報酬をお支払いします」
はやく緊急クエストの方に駆けつけたいんだろう。スタンピードとやらで人だかりが出来ている受付カウンターをちらちら横目で見ている。
「さきほど発生した『スタンピード』というのは特定のモンスターが大量発生する現象です。人的被害はもちろん生態系への影響も大きいため、最優先討伐対象となります。通常のモンスター討伐と同じく指定の討伐部位ひとつにつき一匹の討伐を認め、通常より高めの報酬をお支払いします。そういうことですので、さっさとスタンピードの対応に行きやがれ、です。以上」
ん?
聞き間違いかな。
最後、急に口が悪くなったような?
あっけに取られているうちに、受付さん1号はいなくなっていた。
結局、名前が違うって言えなかったな。
人だかりの出来ているところへ向かうと、受付さん2号がなにやら紙を配っていた。
場所:マチチカ草原
ターゲット
①オークジェネラル
②ワイルドオーク
③プチオーク
紙には、スタンピードの発生場所、それからターゲットの名前と似絵、討伐推奨級、討伐部位の指定、報酬と並んでいる。
木級の推奨は……そりゃまあ、プチオークだよな。一番下の級って言ってたし。
雑魚モンスターを掃除して、ほかの冒険者のサポートをしなさい、と。
プチオークねぇ。
オーク……、オークってブタだっけ、イノシシだっけ……。似絵の情報だけだと、ややイノシシ寄りに見えるな。
どちらにしても骨を回収しておけばラーメンスープに出来そうだ。もちろん肉はチャーシューにする。
調味料が足りないからすぐには無理だけど、アイテムボックスに入れておけば、いつか出番もくるだろう。
腐らない保管庫とか、マジでチートスキルだなアイテムボックス。
あとはマチチカ草原の場所か。
まあ、ほかの冒険者たちに付いていけば大丈夫でしょ。
ほら、着いたっぽい。
ここがマチチカ草原……。本当に草原か?
場所は合ってるんだよな、ここで。
だって無いんだもん。草……いや植物が。
雑草の一本も生えて無い。
見渡す限り赤茶けた地肌。
大地がハゲラッチョ、チェケラッチョ。
「そんな……!? 昨日までは青々とした草原だったのに」
隣の冒険者がそんなことを言ってるから、やっぱりここがマチチカ草原で間違いなさそうだ。
「「「VOOOBUUUUU!」」」
そんなハゲの大地にひしめくイノシシ……クマ?
前傾姿勢の二足歩行で歩くイノシシの群れ。
ゲームとかアニメのイメージだと、オークってもう少し知的生命体っぽい奴らだと思ってたんだけど……。
これはどうみても野生のケモノです、ありがとうございました。
両腕を上に突き出して、こちらを威嚇してくるオーク。
その後方に座り込んで、もぐもぐタイム真っ最中のオーク。
あらあら、口元に緑色のお弁当が付いてますよ。
「あいつらが草原の草花を全部食ったってのか」
そだねー。
隣の冒険者の独り言に、心の中で相づちを打つ。
それ以外、考えられないもんね。
『人的被害はもちろん生態系への影響も大きい』
そう言っていた受付さん1号の言葉を思い出す。
なるほど。コレは最優先討伐対象だわ。
オーク達は8割以上がウリ坊くらいのサイズ。
たぶんこれがプチオークだ。
そして残りの2割が俺と同じくらいのサイズ。
こっちがワイルドオークかな。
オークジェネラル……は、
不意に、涼やかな女性の声が戦場に響いた。
「下から3階級はプチオークを、
声のする方に目を向けると、立派な鎧に身を包んだ金髪の女騎士が剣を掲げていた。ちな美人さん。俺はかわいい系が好きだからなあ。やっぱキキョウさん一択よ。
「おお! 『飛翔する獅子』のフルル様だ!
にわかに周囲の空気が熱を帯びていく。
隣の冒険者の顔もなんだか紅潮している。
どうやら、『飛翔する獅子』っていう有名な冒険者パーティーが参加しているみたい。
金髪女騎士のフルル様はパーティーのリーダーで、冒険者たちの憧れってところか。
それはわかったんだけど……『錫』とか『水晶』とか『金』とかって言われても、どれがどれくらいスゴいのかわからんのだが?
🍜Next Ramen's HINT !!
『チキンと鶏ガラ』
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