限界ラオタ、食材を狩りまくる


「ジローさん。私と一緒になってください」


 朝から超カワイイ女子キキョウさんにプロポーズされた。


 こんな幸運があって良いのだろうか。

 俺、もしかして死んでしまうのでは?


 しかし現実は非情である。


「あっ、間違えました。私と一緒にお店やってください!」


 なんそれ!

 そんな言い間違いってあります?

 俺のメンタルはどん底まで急降下、さまよえるブルーの弾丸だよ。


「お店?」


 平静を装っておりますが、聞き返すのが精一杯なだけです。


「はい。ジローさんのスープを街の名物にしたいんです!」

「なるほど。つまり町おこしならぬ、村おこし……」


 そういえば、前世ではいろんな地方都市がご当地ラーメンとかB級グルメとかで町おこしをしてたなぁ。


「マチオコシ? ムラオコシ?」

「いえ、こちらの話です」


 こっちにはそういう概念は無いらしい。


 まあ、改めて考えると悪い話ではないんだよな。

 元々、ラーメンをこの世界に広めたいとは考えていたわけだし。スープ屋じゃなくてラーメン屋でも良いなら是非もない。


 ただ、この場で「ラーメン屋なら良いですよ」と言ったところで、ラーメンが手元に無いんじゃキキョウさんも困惑してしまうだろう。


 メンマとか味玉とか贅沢は言わないから、せめてカエシとチャーシューだけでも完成させて、ラーメン屋としてお店を出したい。


 今回はお断りして、ラーメンが完成したら俺の方からお願いするのがベストな気がする。



「あの……ダメでしょうか?」


 キキョウさんが上目遣いでこっちを見ている。

 その戦闘力かわいさは53万なんか軽々と超えていた。


 いやいや、そんな目で見てもダメですからね。

 俺は断ると決めたんですから。


「少し考えたんですが……」

「あ、お会計とか配膳は心配いりませんよ。私に任せてください。これでも私のジョブは『商人マーチャント』なんです!」


 キキョウが胸を張ってアピールする。

 ふわりとした丁度良い大きさの双丘に、木漏れ日のスポットライトを当たっていた。

 

「もちろんオッケーですとも!」


 あれ?

 おかしいな。

 1秒前まで断ろうとしていたハズなのに。


「良かったぁ! 断られたらどうしようかと思いました」


 キキョウさんが心の底から嬉しそうな顔をしている。そんなに喜んで貰えるなら、まあいいか。



「それで……お店というのはいつから?」

「今日から」

「今日から!?」


 ウソやん。


「やりたい気持ちは山々なんですが、内装とかいろいろと準備があるので10日後でお願いします」


 ウソやった。


「10日ですか。わかりました」


 10日でラーメン作れるのかな……。

 いろいろと足りないんだけど……。


 いやいやいや、弱気になっちゃダメだ。


 だいじょうぶます。がんばるます。

 

 キキョウさんにも美味しいラーメンを食べてもらいたいしね。

 まずは食材がたくさん必要です。

 

 

 そして 1日目~ 1日目~ 近場で スライム 狩りました~~。


 この世界のスライムは打撃が効かないんだって。

 あとドロドロしててちょっとグロい。


 某国民的RPGのスライムとは大違いで面食らった。


 じゃあ、どうやって倒したのかって?

 そりゃあ、包丁でスパスパって。


 別に「包丁は料理人の魂」とか考えたことないんで問題ありません。

 そもそも俺は料理人じゃなく、作るタイプのラオタですし。


 面白かったのはスライムにいろんな色がいること。色によって、スライムの中の液体が違うの。


 ブルースライム:スライムウォーター(≒真水)

 レッドスライム:スライムオイル(≒液体燃料)

 グリーンスライム:スライムジュース(≒青汁)

 イエロースライム:スライムグルー(≒接着剤)


 なんというか、日常に必要なアレコレって感じ。

 そんな中で俺はついに見つけたのだ。


 ブラックスライム:スライムソース(≒醤油)


 ヤツを手に取った瞬間、スキルの力で感じとった懐かしい香り。

 俺はついに、ついに見つけたのだ。

 日本人のスペシャルソース。醤油を!

 

 残念だったのはスライムが討伐対象モンスターじゃなかったこと。理由は危険度が低いから。


 刃物があれば非力な女性や、子どもだって倒せちゃうくらいだしね。



 2日目~ 2日目~ 森で 妖精 狩りました~~。


「シュガーロ――」


 なんか丸々とした気持ち悪い妖精が近づいてきたから、反射的に殴っちゃった。


 妖精が消えたあとには、謎の白い粉が落ちてた。

 舐めてみたら甘かったから、何匹も追いかけ回して粉を集めたよ。


 シュガーロンロン:妖精の粉(≒砂糖)



 3日目~ 3日目~  浜辺で 貝を 狩りました~~。


 やはり海の幸も欲しいところ。

 そんなときは潮干狩りですね。

 

 砂を掘らなくても、向こうから襲ってきてくれるから潮干狩りより楽。


 アサマグリ:アサマグリ(解体前)&アサマグリの貝がら(討伐指定部位)



 4日目~ 4日目~ 山で キノコ 狩りました~~。


 海の幸を手に入れたら、山の幸も欲しくなる。

 人の欲とは尽きるところがありませんな。


 シイタケっぽいキノコ型モンスターが大量でした。


 シタキング:シタキング(解体前)&シタキングの石づき(討伐指定部位)

 

 アサマグリの貝がらとシタキングの石づきを換金するためにギルドに持っていったら、またクラスが上がったのです。


 白いスベスベしたプレート。今日から牙級ファングクラスだ。



 5日目~ 5日目~ 酔っ払いを 狩りました~~。


 この日は朝からキキョウさんに呼ばれまして。

 村の近くに変なモンスターがいるってんで見に行ってみたら、顔を真っ赤にしたライオンがデカいイビキをかいて寝てたんですよ。


 そいつが息を吐くと酒臭いのなんのって。


 たまに目を覚ましたかと思うと、大きな瓢箪をグビグビやっては「BUHAAAA!」って、日曜日に昼から飲んだくれてるダメ親父みたい。

 

 ムカついたからワンパンで駆除しておきました。


 ヨッパライオン:獅子乃酒(≒日本酒)&ヨッパライオンのタテガミ(討伐指定部位)


 獅子乃酒は、お世辞にも美味しいとはいえない代物だった。

 飲み放題のメニューにある日本酒をイメージすると近いかも。

 調理酒として存分に活躍してもらおう。


 ライオンの肉はマズいと評判なので、ヨッパライオンの肉は丁重に葬っておいた。

 


 ヨッパライオンのタテガミを持っていったら、またまたクラスが上がりました。


 周囲への悪臭、騒音被害の元凶で、討伐難易度もB(水晶クリスタルゴールド)だったらしい。


 昨日貰ったばかりの牙級のプレートを返却して、代わりに水晶級クリスタルクラスのプレートを貰った。チョロいな。



 6日目~ 6日目~ ジローが 作ったのは なんでしょう?




 🍜Next Ramen's HINT !!

 『カエシとチャーシュー』



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