第7話 信用と承認

カチャカチャ…

「お待たせしました。カプチーノ2つ、ハムカツサンド1つ、ミックスベリーサンドになります。」

「ええ、ありがとう…ところであなた…新人さん?」

「はい。バイトです。」

(『臨時の』だけど…)

「そう、頑張ってね。」

「…ありがとうございます。」

スタスタ…

うん、なかなかうまくやれたんじゃないだろうか。

先程から接客業を任されているが、今のところ特に支障はない…はず…

「うん、上手いんじゃない?」

「初対面の人相手じゃ大丈夫か心配だったけど、案外大丈夫そうだね。」

「…僕の初対面の印象ってどんな感じでした?」

すると、少しの沈黙のあとにこう返してきた。

「何か…無理してるのかなって。」

「そう…だね。親しげに接してるように見えて、心の防壁はしっかりしてるっていうか…正直、こんな短期間で一応…仲良くなれるとは思ってなかったよ。」

…確かに…そんな感じだったような気がする。

そういえば…どうしてこんなに仲良くなれてるんだろうか…

明確なきっかけは…あの、あさみさんのせいか。

あの話のあとに聞いたことがある。

『仲良くしてあげて』と。

だから歩みよった。あさみさんは、孤児院の皆に数年間付き添って過ごしてきた人だから…信用できる。

だから信じることにした。

いずれは…僕の過去のことも明かそうと思う。

そして…僕がどれだけ薄汚れた人間であるかを、いつかは伝えないといけない。

「明くん!今来てる人の人数確認お願い!」

「わかりました。」

今はお店は別段混んでいるわけでもないから、わりとスムーズだ。


「おお、やってるやってる。」


「…当店は貴女あなた様の来店を許可した覚えはありません。」

「ちょ!なに言って…!」

「ほうほう…ではその姿は…」

「見るんじゃない…!」

まさか…噂もしてないのに来やがるとは…

まぁいい…今は仕方ない…。

接客は仕事だ…やらなければ。

「…こほん…何名様でしょうか。」

「見ての通り、1人で~す。あ、でも、君が一緒に…」

「1名様ご来店です。」

「…言わせてよ少しくらい。」

顔見知りなので拒否しようとしたら断られた。

私的にはさっさと帰ってほしい。

この使用人っぽい服がこの人に見られるとは…

「え?え!?えっ、ど、どういうこと!?」

「あ、いらっしゃい…あさみさ…」

義姉ねえさん…ね。」

「ね、ねえさん…」

たぶん拓磨さんは普通に呼んだだけだ。なのに殺気?を飛ばして強引に義姉ねえさん呼びにさせた。相変わらず強引…

「まあ、それで良いか…っていうか、久しぶりにここに来たら…面白…いや…カッコいい服着てる明がいて…つい…(笑)」

「出禁にしますよ。」

「やれるものならやってみたら。」

くそっ…権限がないの知ってやがる…。

「あはは…さすがの明くんの頼みでも…妻の姉は出禁にしちゃダメかな…。」

「フフーン。ほら、お客様よ。席に案内して。」

「わかりましたよ…。」

もうこうなりゃヤケだ。


「うん。君がそんな服着てると本当…ショタっぽくていい…。」

「何ですかそれ。」

「んー?聞きたい?じゃあ、お姉さんが教えてあげよっか?」

その変な上目使いをしてるときは大抵いらない、なおかつ変なことを考えてるから…。

「いいえ。結構です。それよりも業務に戻らせてください。」

「ちぇ…素っ気無いの~。」

そういって、あっさりと解放してくれた。

まったく…来たと思ったら迷惑ばっか掛けやがって…

そう考えながら、カウンター裏へと戻って行く。

「…分かったわ私。まだ君と仲良くはない…。」

「同感だね…」

「?」


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