拝啓、最低なセカイへ。
第59話 導きとは、
「ふぅ…とりあえず…どうするかな…」
肩肘をつき、ため息を吐きながら、拓磨さんは呟いた
「…『どうする』…って?」
「みおにこの事を言うかどうかだよ…どうせ言うことにはなると思うけど…やっぱり早い方がいいかな…」
「…っ」
琴音ちゃんがいる右手側の服のすそが引っ張られる感覚がした
…あんまり…多くの人に知ってほしくはないよな…
「…それは…琴音ちゃんが辛いと思います…」
果たして聞こえているかもわからない
…なんで…こんなに僕は怯えているんだろう…
「…蓮、どうしようもないことでいちいち悩むな。」
「…」
やはり…拓磨さんには見透かされていた。
「…怖いんです、そういう…なんとなく…『
自分より立場が上のモノ…
そう考えると、いつもいつも…父を思い出す。
アイツが頭に出てくる度…負わされた暴力の痕が焼かれたような錯覚がする。
鮮烈に…焼き付いている。
「…仕方のないことだよ、蓮…この世は初めから平等なんてありはしないんだ。」
頭を撫で付け、ぐわんぐわんと揺らされる
少しバランスを崩しそうになった
けど、拓磨さんは優しく受け止める
「ありがとうございます…」
「うん、蓮にはそれくらい純粋でいて欲しいよ。」
「…純粋…?」
あれだけのことがあったのに…まだ僕は純粋…?
よくわからなかった
幾らでも自分を呪った
数えきれないほどの悪意と憎悪を抱えて、それを必死の仮面で覆っただけの…
「僕は蓮くんが思ってるよりもお人好しだから分かるんだよ、蓮くんはきっと、僕が知っている誰よりも…綺麗な心を持ってるはずだから。」
…やっぱり、拓磨さんは…僕よりも深くて…浅いところで考えてるんだ。
実際にそういう悪意に晒されたことはない浅さ…そして、その人たちのことを心の底まで考え抜く深さを。
…まるで海のように。
「拓磨さんのズルさが少し分かった気がします」
「そうかい?なら良かった。」
緊張していた空気の中、少しだけ微笑むことができた
…やっぱり、拓磨さんはズルい。
「ところで話を戻すけど、蓮はみおに報告してみるのは反対だね?」
「はい、みおさんには終わってからちゃんと話すくらいでいいと思います…そうじゃないと…みおさんが何をやり出すか分からないのもありますが…」
「あはは…」
と言うのも、みおさんは忘れがちだが、あのあさみさんの妹なのだ。
…最低限、今すぐ車で突撃してバット振り回すくらいの
…だが、それはそれで琴音ちゃんの苦痛が無くなるなら別にそれくらい良いか、とも思う。
「みおは…十中八九…襲撃か脅迫になるからなぁ…」
「…拓磨さんの妻なのに拓磨さんが制御できなくて誰が制御するんですか…」
「…僕にみおのコントロールが出来るなら早朝から…いや、この話は止めよう…墓穴しか掘らない。」
ホントに大丈夫かこの夫婦…
考えはしたが、行動がヤバいだけでお互いがお互いのことを好きなので(片方多少愛が重くはあるが)きっと僕が大人になってもこの空気感だろうな…
「とりあえず、みおには言わないで行こうか。あとは…よし。」
「拓磨さん?」
「うん、問題ないよ。とりあえず、二人とも。学校では僕ら夫婦みたいな距離感で居てくれれば。」
「…は?」
「…んっ!」
「えぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「…というか…居たんですか奈那さん…」
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