通り雨、止むことはなく
第66話 悪魔の正体
僕の暮らしている佐藤さんの喫茶店
そこに新しく僕の弟が来て、その翌朝。
幾つかの封筒が、僕宛に届いた。
1つは特例型の本人限定受取郵便…と呼ばれるもの。
まあ中に入ってるのは
…どうせいつか…面会をしないといけないことは分かってたから、前々から申請だけしていた。
刑務所にいる人物に面会を行う場合、予約等は必要ないが、身分証明書の提示が必要らしく…
…ということで、これで僕はいつでも面会を行うことができる。
…応じるかどうかなど、弟の名前を出せばそれでいい
アイツは、そんなやつだ。
そして2つ目の封筒。
こちらは孤児院の皆からだった
「ははは…皆元気そうだ。」
「兄さん、なに見てるの?」
「起きたか…ほら、僕が過ごしてた孤児院の皆の写真だよ。」
なんだかんだ、この家にも空き部屋はあるのだが…やたら春が一緒の部屋がいいと騒ぐので同部屋で寝ることになった。
ベッドも1つしかないし、それもさほど大きいものじゃないので、正直狭い。
まあ…春もいつか好きな人ができれば兄さんのことなんて考えもせず幸せになるんだろう。
…それもいいか、と少し笑う。
僕は、春がこれから幸せに生きられるなら、なんでもいい。
そう、心から思える。
そんなことを考えながら、ベッドに寝転んで写真を熱心に眺める春を尻目に、3つ目の封筒を見る
前の2つとは違って、真っ白な封筒に僕の名前が書かれている。
誰が書いたのかと考えながら、封筒を開けてみる
『こんにちは、紀村 明さん』
途端、冷たいもので背を撫でられるような感覚がした
…なぜ…なぜ、『それ』を知っている?
この街に来てから少し。
僕のこの名前のことを知る人は、考える限り(拓磨さんやあさみさんらを除くと)1人もいない。
冷や汗が流れる
動悸が止まらない
呼吸が、乱れる…
「…?…兄さん大丈夫?」
「…大丈夫。」
弟の声を聞いて、少しだけ心が落ち着いた。
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『私は、あなたの秘密を知っている』
『ひとまず安心してほしい、それを外部に口外するなどは一切考えていない。』
『ではなぜ、この手紙を書いたのか』
『単刀直入に言うと、それはあなたの過去にある』
『あなたは、過去に1人の少女を殺した』
『…いや、正確には殺したと認識した』
『そう、彼女はまだ生きている』
『
『けども、1つの条件を彼女は提示した』
『それは―』
読みきった。
…そして僕は悩んだ。
一瞬でも、悩んでしまった。
途端に、酷く自己を憎んだ。
「…まだ…まだ何もできてない…なのに…」
春には聞こえないくらいのか細い声で
僕はまた、くそったれな選択を迫られていた。
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