第67話 憧れになれない僕ら
―早朝、僕は家を出た。
何も、すぐに行くわけじゃない、今日は金曜、学校だ。
…だが…
「蓮、恋人繋ぎしよ」
「兄さん…兄さんはボクの兄さんだからボクと手を繋いでくれるよね、ね?」
「…」
「あ!!また『めんどくせぇ…』みたいな顔してる!!!」
「ん…蓮がそう思ってるのは抱きつかれて骨が当たって痛いから。ほら蓮、もっと私にくっついて」
「だっ…誰が貧相な体ですか…!」
…実際のところ、春はまあ有り体に言って、ない。
だからこそ男に見間違えたとも思えるが、実際あまり会話も出来てないし、交流さえそもそも困難だったのだ、だから仕方ないと思っておく。
「兄さん…兄さんは胸の大きさだけで人を好きになるんですか…?」
「ん、男の子はみんな大きいのが好き。」
…ぶっちゃけ、僕としては色々あったから、性欲とかそういう欲求が鈍くなっているのだ。
だから奈那さんとも、付き合う一歩手前で止まっている状況な訳で。
正確に彼女との約束を言うなら『忌避感と全くの無感情』というのがあるから断った、ということになる。
奈那さんに対して『無感情』ということは無いので言わなかったが、未だに『女性』には壁を感じたから、それもついでに断る理由にした。
「んっ!!」
「兄さん…?答えてくれないと困りますよ…?」
唐突に両腕を揺さぶられ、思考を中断する
「僕は胸の大きさで好き嫌いを分けたりしませんよ」
そもそも外見だけで誰かを好きになることなんて無いと思うが…
「うん!兄さんならそう答えてくれるよね!!」
「ん…大きいのが好きならそう言うべき…」
「それにその…もうすぐ学校ですから…いい加減止めません…?あと春はなんでついてきてるんだ…?」
服装も、僕と琴音ちゃんは制服なのに、春だけは私服(僕が今朝あげた服)なので、見た目からも学校に行くわけじゃないと分かる。
「それはその…学校に行ってる兄さんが他の女に
「…そういえば紹介してなかったな…」
「ん、
「…兄さん、婚約してたことはまだギリギリ分かるとして…それを奪おうとしてる人がいるっていうのは普通にどうなんです…?」
「…ごもっともです。」
僕としては、今僕が抱えている問題全てを解決し終わったら奈那さんと付き合うつもりだ。
理由としては、一番最初に僕に告白したことが大きい…でもそれ以上に、彼女が僕のそばにいて、そうやって過ごした日常は…償える気がした。
繋がりがあるかは分からない。
でも、それが彼女のためになると思っていた
しかし、今朝届いた手紙。
その内容は『条件付きで僕を許す』というものだった
…この選択を僕に委ねるしかないのは分かる、でも…あまりにも…酷な選択だ。
僕には、未来を選ぶ力がないのかもしれない。
…てるてる坊主みたいな、そんな力は…僕にはない。
「…兄さん?」
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