第63話 会いたかった…
「えっ…?春って…蓮の弟!?」
「弟…?」
驚くのもその通り。
僕が弟だと思っていた『彼』…もとい『彼女』は…
男性ではなく、女性だったのだ。
「…そういえば蓮は…学校時代のいじめじゃ、女の子からいじめられてたはず…なのになんで私だったり、孤児院時代から女性に対して忌避感を抱いてないのか不思議だった…それは『妹』がいたから…!」
身体は…気付いてたのか…
目では、耳では、匂いでは…僕の全てじゃ気付かないことも、僕の身体は覚えていた。
彼女の愛しさを
彼女の優しさを
守るべき…守らないといけない存在。
でも…
でも今は…
「…兄さん…」
「は……春…っ…!」
抱き締める。
柔らかくて…温かい。
生きている
生きている…!
僕の…『
ひとしきり泣いた。
彼女の右肩を、涙でひたすらに濡らしてしまった。
でも…
「…ちょっと…泣きすぎだよっ…兄さん…っ…!」
…同じくらい…僕の右肩も濡れていた。
「「会いたかった…会いたかったんだよ…っ…!」」
会いたくて…
会いたかった…
会って…話さないといけないことがたくさんある
全部…全部…面と向かって話せるなんて…
夢みたいだ…
「あ~…入るタイミング無くしちゃったな…」
抱き合う僕らを尻目に、みおさんがひょこっと顔を出しながら言った。
「まあまあみお…ここはあの二人に譲るべきだよ。」
「…そうだね…。」
ふたりに見守られながら、僕らはずっと泣いていた。
「…でも…どうして春がここに…」
少しだけ冷静になった頭を働かせながら、なぜここにいるのかを尋ねてみる
「実はね…蓮くんがよく文通してる相手がいるなってことは、前からよく分かってたの。一つは孤児院ってことは分かってたんだけど、もう一つが分からなかったから…
「…そんなこと僕知りませんでした…」
「まあ、言ってなかったからね…」
「兄さんっ、兄さん!ボク、話さないといけないことがいっぱいあってね、手紙も!返そうとしてたんだけどボクの過ごしてたとこだと手紙の返信も許してくれなくて…返したかった…本当にずっと…嬉しかった…!!ボクは愛されてるんだって、帰る場所があるんだって…『家族』がいるんだって…!!」
泣きながら、必死になって言いたいことを長い想いの分だけ、ずっと語り続けて…
でも今は…それさえも愛おしい…
「うん…うん…!聞かせてくれ…好きなだけ喋ってくれ…!僕は…それを望んでたんだ…!」
「全部、だよ…全部聞いてもらうからね……本当に…本当に…寂しかったんだから…!!」
皆に見守られながら、僕らはずっと泣いていた。
「本当に…良かったね…蓮くん…」
「はい…本当に…!」
後ろから聞こえた奈那さんの声
弟が生きていたこと…目の前にこうしていること…
そればかりが頭を埋め尽くしていたから、なにも考えずに返していた。
そんなことをすれば、
「兄さん…あの人…誰?」
「あぁ…天木 奈那さん」
「天木…」
その名字に多少のとっかかりを感じたのか、春は言葉を繰り返す
そして…若干言うか迷ったが言うことにした。
「えっと…僕の彼女になる予定をした人です…」
「…え」
「えええぇぇぇぇ!!!???」
…まあ…驚くよな…
めんどくさいからって手紙に書かなかった僕が悪いのだが…
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