第10話 よかったな・・・本当に

放課後


「祈、久しぶり」


「久しぶり金剛くん。驚いたわ、あなたがあのクラスなんて」


「いやもうちょっとなんか別のことで話そうぜ!?色々あるぞ!?いきなりお前が帰ってきたこととか無事だったのかとか!結構心配してたんだからな!?」


「そ、そうなの?ちょっと圧が強いわ」


「ご、ごめん・・・それで、大丈夫だったのか?」


「その件なんだけど・・・あなたと別れた後どういうわけかそういうことがめっきり発生しないようになって」


「え?そうなのか!?それは・・・よかったな・・・本当に」


「ありがとう、でもちょっとした弊害が出て困ったことがあって」


「なんだ?」


「・・・・・・・いえないわ」


「なんじゃそりゃ。・・・じゃあボディガードはお役御免ってことか」


「そうとも限らないわ、もしかしたらこの体質はこの町限定かもしれないし」


「だとしたらなんで帰ってきたんだ」


「え・・・」


その瞬間彼女はとても寂しそうな顔をした。


「約束、したから」


「約束ってボディガードのか?もしかしてお前俺がいるからここに帰ってきたのか?」


「全然全く一ミリもそんなことないけど。あまり調子に乗らないことね」


「ひでえ」


俺がいるから戻ってきたんだとしたら可愛すぎるって思ったけど相変わらず冷たいな。でもこの空気感懐かしくていい。


「さ、帰りましょ。家は前のとこに戻ってきたから同じなの」


久しぶりに二人で路地を歩く。夕暮れで赤く染まった街の中で俺の横を歩く少女は相変わらず無表情で何を考えているかわからない。ただ何故か祈の口元がひくついている気がして、嬉しくて溢れそうな笑みを堪えているのだとしたらと思うと勝手に妄想しておいて舞い上がってしまった。そんなはずはない、彼女は俺を嫌って・・・嫌って・・・嫌われてはなくないか?


「なあ祈」


「何かしら」


「俺のこと好きか?」


「・・・・・・ふぇ!?」


あ、聞き方ミスった。やばい恥ずすぎる言い換えないと・・・!


「あ、いや、間違えた!俺のこと嫌いかって聞こうとしたんだ!ほら!昔お前態度冷たかったし今そういうのないからどうなんだろ?って思って!」


「あ、そ、そういうことね!別に初めから理解していたけれどわざと

あなたに合わせてあげたのよ!分かってたわよ?ええ、分かっていたわ、私頭いいもの!それはもう全てお見通しよ!」


「伝わってて良かった。それでどうなんだ?まだ嫌いなのか?」


「あなたも頭いいんじゃないの?なんで気づかないのかしら?こんなこと誘ってる時点でs・・・・嫌ってないに決まってるじゃない」


「そ、そうか!良かったー」


今なら聞いても答えてくれるかな?


「なあ、今だから聞くけどなんで中学の頃あんな冷たかったんだ?」


「それは・・・いつか教えてあげるわ。今は無理ね」


「えぇーケチ」


「なんとでも言いなさい。ほら、ついたわよ。じゃあね」


「ああ、また明日迎えに行くわ」


「・・・やっぱりあなた嫌いかも」


ガチャン!


「なんか悪いことしましたか!?ちょっと!?ドア開けて話を聞いて!おーい!(泣)」


ーーーーーーーーー


???

「えへへ・・・やったねっ!」


笑顔の少女の顔は熟したりんごのように赤かった。それは夕暮れの日によるものなのか、知っているのは彼女だけだ。

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