第15話 受けて立とうじゃないか

祈の体質が元に戻ってから二週間が経った。この短い時間で昔より関わった時間が長くなったのが信じられない。


「・・・しない?ってちょっと?聞いてるの?」


「ん?ごめんぼーっとしてた。何か言ってたか?」


「私が話してるのに生意気ね、死になさい」


「ごめんなさい謝るからもう一度お願いします」


「死になさい」


「そっちじゃねえ!俺はドMか!」


「違うの?」


「舐めんな普通の人だわ。それで、なんだって?」


「1週間後の中間テスト、私と勝負しない?」


「いいけど急にどうした」


「あなたの実力を測ろうと思って」


「なんで?」


「私に物を教えたんだから勝てて当然でしょ?これで負けたら生意気ポイント1億だわ」


「めっちゃ理不尽な内容やんけ・・・いいけどさ、多分俺負けるぞ?」


「そういうのはテストが終わってから言いなさい。努力する前からそういうこと言うやつは全員刻みネギを食べる度に全ての歯に挟まればいいわ」


「地味に嫌なので全力でやらせて頂きます」


「励みなさい」


というわけで勝負することになりました。負ける気しかしねぇ・・・



ーーーーーーーーー



とはいったものの友達作らないくらい文武に励んできたからやること変わらないと思うんだが・・・鍛える時間減らすのが一番効率いいかな?メニューハードにすればなんとかなるやろ。


「しゃあ勝ったるかー!」


あいつに勝つってことは目指せ学年一位だな。


中間テストは国数英理社の五教科とその中でさらに分かれて現代文、古典、数1、数A、英語表現、英語演習、化学、世界史、日本史の九科目で行われる。

現代文はケアレスミスさえなければ100点取れるし化学、世界史、日本史は暗記すればいけるので毎日反復すれば余裕。古典、英表、英演は日々の積み重ねで変わってくるがめちゃめちゃ積み重ねてる俺にとっては問題ないはずだ。

問題は数学、俺は昔から数学が苦手で公式をいくら見ても覚えられない貧弱脳を不満ながら持っているので最強数学脳に頼ることにした。


「てなわけで俺に数学を教えてくれ、できるだけわかりやすく頼む」


「あなたプライドはないのかしら?競う相手に教えを乞うなんて」


「そんなもん犬に食わせて排泄されてるわ」


「無敵の人間が一番厄介ね・・・いいわ、ただし条件があるわよ」


「お、受けてくれるのか!それで条件とやらは?」


「・・・私に現代文と古典を教えなさい」


「え?お前も教えてほしいんじゃん。でも前の図書室で玲音に教えてた気がするんだが?」


「知識問題だけならなんとかなるの。記述問題がどうしても苦手で、中学まではなんとかなってたんだけど高校になってから問題の答え方がなんというか、一捻りして解答しないと正解できない感じに変わってね。それだけ唯一できない貧弱脳に不服ながら成り下がったわ」


「なんか似たもの同士だな俺たち」


「そうかもしれないわね、でも勝負は勝負よ」


「分かってるよ。そもそもそんなにこだわる意味がわからないけどな」


「実はなんとなくって言ったら怒るかしら?」


「いや、意外と楽しいかもしれんから全然平気」


「そう、ならいいのだけど。今更だけどこの勝負罰ゲームあるから頑張ってね」


「初耳なんだが・・・どんな罰ゲームだ?」


「敗者は勝者の欲しいものをプレゼントするのよ」


「絶対これのために仕掛けただろお前!勝って馬鹿高いの言われたら流石に怒るぞ!?」


「そこは勝者の良心に委ねられるわね」


「終わった、今楽しみが絶望のデスゲームに変わった気分だ」


「お互い負けないために勉強会でもしましょうか。場所はどこがいいかしら?」


「また図書室でいいんじゃないか?」


「この時期だと利用者も多いだろうし人が多いと集中できないのよね」


「うーん・・・」


これはチャンスなのでは?いわゆるお家勉強会ってやつができるのでは?


「じゃ、じゃあさ、祈がよければだけど・・・俺んち来るか?」


「・・・・・・・・・・・・んにゃ!?」


「い、嫌なら別の場所探そうぜ!無理言ってるのは分かってるし!」


「い、いきましゅ・・・!」


「そ、そうか!じゃあいつにする?今日は」

「今日はちょっと無理そうだから明日にしませんか?」

「はええな!まあそういうことなら、明日にするか。休日だけど何時からやる?」


「じゅうじとかでおねがいします」


「おっけ了解、準備して待ってるな」


「は、はい」


よっしゃあ!擬似的なおうちデート確約ぅ!もう罰ゲーム受けてもいいわ。

帰ったら家片付けないとな。


ーーーーーーーーーーーー



「な、何着て行こうー!?おとなしめの服?ちょっと大胆な服?カジュアルな感じ?もおー急すぎて決めらんないよぉー!」


ベッドの上でジタジタする少女が一人であわあわと喋っている。側から見たらだいぶおかしい子だ。


「幸せすぎて心臓痛い・・・生きて帰れるかな?ていうか私キョドってなかったかな!?変に思われてなかったらいいんだけど・・・あーもう緊張するのに嬉しいのなんなのー!?」


結局少女はその日一睡もできなかったらしい。

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