第20話 可愛いがいっぱい

休みが明けて月曜日、プレゼント交換の日だ。


「おはよう祈、プレゼントちゃんと買ったか?実は俺だけとかだったら泣けるぞ?」


「おはよう金剛くん。そんなわけないでしょ、しっかり買ってきたわよ」


「なら安心だな。それでどうする?渡すタイミングがよくわからなくてさ、昼休みにあの空き教室でいいか?」


「私もそうしようと思っていたところよ、それでいいわ」


「おっけー」


ドンッ

話しながら歩いていると角から出てきた人と祈がぶつかった。


「あっごめんなさい・・・何かしらあの人、何も言わずに走り去ってくなんて。相当急いでるみたい・・・・あれ!?鞄がない!?まさかあの人!」


「任せろ」


俺はすぐに男が走った方向に駆け出した。

許せんあのチンパン野郎あの中には俺へのプレゼントが入ってるんだぞ!

怒りを動力源にした俺は地面に穴をあける勢いでダッシュしてあっという間に犯人に追いついた。


「おいてめえいい度胸だな」


「な、なんのことですか?いたたた!離してください!痛いです!」


ん?こいつよく見たら鞄持ってないな、仲間がいて渡したか走ってる途中で隠したか・・・


「とりあえず服の中調べる、スマホも貸せカス野郎」


「痛い痛い痛い!わかりましたから!」


服の中には隠してないみたいだな、直近で電話かけてたやつにかけるか。


プルルルル


「ピロピロピロ!」


「そこか」


思った通り近くで待機してる奴がいた。


「あぅ・・・」


ひったくり犯を気絶させて電話の主に瞬間移動する勢いで詰め寄る。脇には祈の鞄が見えた。


「何しとんじゃゴラア!!」


「へぶあぁ!?」


「二度とやんじゃねえぞカスども」


近くにいた人に警察を呼んでもらっていたようで事情を説明して二人組はすぐに連行されて行った。


「ほら、もう取られんなよ?」


「あ、ありがとう。気をつけるわ」


「気にすんな、行こうぜ」


おい俺ちょっとかっこいいんじゃないか?誰か褒めてくれよ俺かっけえぞって、ダメか・・・



ーーーーーーー


昼休み


「お待ちかねのプレゼント交換タイムだ」


「先に私からあげてもいいかしら?」


「どうぞどうぞ」


「これよ」


「結構大きいな」


「開けてみなさい」


「それじゃ遠慮なく・・・・これは、服か?しかも結構多いな」


「前にあなたの家に行った時同じような服しかなかったからおしゃれなのをいくつか選んでみたの」


「へえーそれはありがたい、よくみてるんだな」


「たまたまよ」


「俺一つだけなんだけどなんか申し訳なくなってくるわ」


「大事なのは量より気持ち派だから何も言わないわ」


「ならいいんだけど。これだ、開けてみてくれ」


「思ったより小さいわね、あら?これって髪飾り?綺麗・・・」


「そうだ、祈に似合うと思って」


「つけてみてもいい?」


「もちろん」


「・・・ど、どうかしら?」


「めっちゃ可愛いと思う」


「かわ・・・・!んんっ!よ、よく言われるわ」


「それつけてる祈想像しながら選んだから絶対合うと思ったんだ。でも想像超えてきたわ、まじでいい」


「そ、そんなに言われると悪い気はしないわね!」


「成長期終わったしこの服も一生大切にするから。でもよく俺の服のサイズなんてわかったな」


「それはいつもみてるから目測で・・・じゃなくて!他人の採寸を目測でやることだけは自信あるのよ!私!」


「服飾関係で働いたら最強の能力だなそれ」


「よく言われるわ!」


「公言してんのかよ初耳だわ。まあとりあえずは一安心だな」


「私も安心したわ。全部いらないなんて言われたら心中してたもの」


「そんなわけないだろ、鬼か俺は」


「冗談よ」


「表情変えずに言われると怖いんだよ、笑ってる方がめっちゃ可愛いのにな。まあ普段から無表情だからレア度上がって相乗効果で可愛くなってる説はある」


「か、可愛い連呼しないで、なんだか恥ずかしいわ」


可愛いじゃん、今も照れてるのが可愛いじゃん。


「わかったよ、もう可愛いって言わない」


「え?」


「その髪飾り大事にしてな」


「それは当たり前だけど・・・なんでもないわ・・・」


「どうした急に」


ガァンッ!


「どうした急に!?」


「私は馬鹿の間抜けってことに気づいて机に謝罪したのよ」


「お前たまにガチでこええよ」


昼休みが終わりそれからあとはずっと自分で自分を呪い続ける祈だった。


ーーーーーーーー


深夜


「ああああー!ミスっちゃったあー!せっかく初めて可愛いって言ってくれたのにー!今日ちょっとだけメイク気合い入れて功を奏したかと思ったのにいー!やらかしたよおー!」


チラッ


少女の見つめる先にはとある髪飾りが置いてある。


「ふふっ!嬉しすぎて口角上がったまま治んないや、明日までに治しとかないと!あーでもこの幸せをもっとさけびたいいー!嬉しいー!」


布団の上でニヤニヤしながらジタバタする美少女、奇行でしかない。


「毎日つけたら露骨すぎるかな?でもつけてこない選択肢とかありえないよね。世界で一番の宝物なんだから祀るか身につけるかの二択なんだから」


彼女の頭は今馬鹿になっている。


「朝もホントにカッコよかった!何あれ!あれで惚れないとか人の心持ってないでしょ!なに『任せろ』って!キュン死するかと思った!」


ずっと頭がハイになっていた少女だが少し経つとしょぼくれてしまった。


「明日は素直になれるかな・・・?告白したいなあ」


彼女の悩みはまだ続きそうだ。

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昔助けた女の子に嫌われてます ふやけた干し芋 @rioshell

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