第6話 どうしても笑っているとこを見たい
アレから一週間が経った。
俺と祈は変わらず不運な主人と頼りになる付き人の関係を続けている。祈の言うことは本当だったようでほぼ毎日何か災難が訪れる。襲われるのは人間だけじゃないようでカラスとか野犬にも遭遇した。
もうなんでもありじゃんこんなのどうやって生きてきたんだこれ。
そんなことばかり経験してきたからなのか祈は全く笑わない。少なくとも俺の前で笑っているのを見たことがない。
てなわけで俺は今猛烈にこの隣で無表情を貫いている少女の笑顔が見たい。キモいのは自覚しているが一週間も同じ表情されると流石に堪える。
「祈」
「なに?」
「笑ってーはいチーズ!」
カシャ
「は?なに急に、殺されたい?」
「いや、カメラ越しなら笑うかなって」
「くだらないことしてないで周り警戒して。あと写真消しなさい」
クソゥ失敗か。まあ写真は削除して後で復元すればいいや。
「復元とかしないように消去してね、残ってたらハチミツ鼻から流すわよ」
「見てください綺麗さっぱりありません祈様」
「よろしい」
どうしようか
ーーーーーー
昼休み、どうしたらあいつを笑わせられるだろうか考えていると隣のクラスの親友、
「よお当真、飯行こうぜ」
「いいぞ、席空いてるかな?」
「ぎりぎり空いてるんじゃないか?なかったら立ち食いするだけだ」
「それは嫌かもしれないから早く行こう」
「そうだ、
「え、珍しいな。お前が三人で飯食うの許すなんて」
「そんな束縛強くないわ、玲音が久々に三人で飯食いたいって言うから誘ったの」
「そりゃありがたい申し出だ」
「お前も彼女の一人でも作ったらどうだ?いいぞ彼女は」
「だまりなクソリア充、俺には俺のペースがあるんだよ」
「その言い方だと祈と最近仲良くなれたのか?」
「うーん微妙」
「なんじゃそりゃ」
駄弁りながら歩いているといつの間にか食堂についていた。
「おーい二人ともー!」
「お、玲音久しぶり」
「やあやあトーマくん!今日も強そうだね!飛びついてもいいかな?」
「「ダメに決まってるだろ」」
この元気娘は
他者へのスキンシップが激しく隼人が束縛強くするような行動するのもわかる気がする。今はだいぶ抑制されたが昔は平気で抱きつかれて隼人から嫉妬の視線を多大にもらっていた。
昼食を食べ終えて雑談しているとふと今朝のことを思い出した。いつも笑いの絶えない玲音なら人が笑ういい案を出してくれるんじゃないか?
「なあ玲音、無表情のやつを笑わせる方法ってないか?」
「そんなの簡単だよ!その人を楽しい〜!って気持ちにさせれば自然と笑ってくれるよ!」
「それ多分一番難易度高いぞ」
「そんなの誰にやるのさ」
「どうせ祈のことだろ」
「あぁー舞衣ちゃんね!かわいいもんねえ」
「そうだけど大声はやめてくれ恥ずかしい」
「確かにあの祈が笑ってるところとか想像もできねえが」
「だからぁ、たのしー!って思わせればいいだけだよ!」
「参考にならないけど参考にするわ。ありがとな」
「なんか気になる言い回しだけど、どいたま!」
「報告待ってるぞ」
「しねえよ」
ーーーーーーー
「あなたって空手以外何かできるの?」
「一応合気もかじってるけど中途半端な実力しかないよ。全国出れるかどうかのレベル」
「素直にすごいわね」
褒めてるのに表情変わらんのえぐいって。
こいつを楽しませる?どうすればできるかマジで思いつかん。
お?
「野良猫だ」
「あらかわいい」
「どうしたんだろ?チッチッチッチッ、おいでー?怖くないよー」
「シャアアア!」
「いってぇ!?」
「馬鹿ね、野良猫が懐くわけないでしょ。・・・・・・・」
「そんなこと言って祈も本当は懐かれたいんじゃないのか?」
「そんなことないわよ・・・・・・お、おいでー・・・?」
「いやそうじゃん」
かわいいなおい
「ニャーン?」
「!!!こ、怖くないから、いい子だからおいでー?」
懐柔されるのはっや
(ゴロゴロ・・・)
「はぁあかわいいー!」
おめえのがかわいいわ。ひっくり返ってゴロゴロ言ってる猫と戯れる姿はモデル画集の一ページにあっても違和感はないだろう。
ん?
可愛すぎると思ったらめちゃ笑ってるじゃん、そんな顔もできたんだな・・・惚れました。惚れてました。パシャッ
「お、猫と戯れる美少女か、こりゃ高く売れr」
「邪魔すんなキモデブゴキ野郎」
ドゴッ!バゴッ!チーン!
「ぶへぁ!?ぶごっ!?カヒュッ!?」
ドサッ
ふぅ・・・少なくとも今はこの笑顔をもうちょっと見ていたい。
あ、写真は絶対消さない、いろんなとこに保存しといてやる。
「かわいい〜!」
だからかわいいのはお前だよ
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