Episode 13 親権
元夫に、離婚の話はどうなっているの?と電話しました。すると、
「送ってこい。判子押して出してやるから」
と言われ、
「えっ?」
私が、別れてくれないと諦めかけてた日々は何だったの?
すぐに離婚届に必要事項をすべて記入し、あとは元夫の署名捺印があれば提出できるようにして、送りました。
……連絡が来ません。
「どうなったの?」
電話をすると、
「あの離婚届は無効だ」
と言うのです。何故??
「まゆの親権が、俺になってないだろう?」
何それ? 何言ってるの? 馬鹿じゃないの? 頭おかしいの? なんで、まゆの親権をこのDV夫に渡さないといけないの?
しかも、まゆだけ?
「あなたに子供たちの親権なんか渡すわけないでしょ。それに何? まゆの親権って。ゆりは?」
「ゆりみたいな障害児は、俺の家の子供とは認めない。まゆは俺の跡継ぎだ。俺が親権を持つのが当たり前だろう。」
……信じられない。本当にこんなことを考えているとしたら、こいつは完全に頭がおかしい。異常者だ。
こんな奴に子供の親権を取られたりしたら、どうなるか……、想像するのも恐ろしい。
協議離婚は、諦めざるを得ませんでした。
調停離婚に移ります。けれど、何度の調停を重ねても、全く話にならない。調停員さんが音を上げました。
「何度、調停を重ねても無駄です。あんな人はみたことがない。でも、とにかく早く別れたほうがいい。あなたがおかしくなってしまう。」
そう言って、裁判離婚を勧めてくれました。
でも、私には、裁判をするお金などありません。あるのは、もう、子どもたちの将来のためのお金だけ……。
「時々、弁護士無料相談をしています。その時に相談に行ってみてはどうでしょう?」
そう、調停員の方が教えてくれました。
弁護士無料相談に行きました。先生にこれまでの経緯と、離婚したいけれど、もう裁判しか残っていなくて、手元に娘たちのために残しておいたお金しかないことを話しました。それは着手金を払うと、報酬を支払えないかもしれない額でした。
その先生が言います。
「知り合いの弁護士はいないの?」
「いません。ですから、困ってしまって……」
「持っているお金の半分なら、とりあえず払えそう?」
「ええ……でも報酬が……。」
「私でよかったら引き受けようか?」
「え?」
「いいよ。半分で。引き受けるよ?」
信じられないことでした。絶対にお金が足りないと思ってたのに。
「ありがとうございます。宜しくお願いします!!」
こうして、まゆの親権と、離婚をめぐっての裁判が始まったのです。
その最中に、一つ思い出したことがありました。子供たち二人にかけていた学資保険のことでした。自分の貯金や、母親に手伝ってもらうなどして、ずっと掛け続けた保険でした。が、どうしても払い続けることができなくなり、解約せざるを得なくなりました。
その保険契約者が元夫になっていたばっかりに、解約保険金も貰いに行けません。元夫が知ったら、全部持っていかれてしまうでしょう。私が、毎月の生活費から無理して払って、無理になったら自分の貯金から払って、それでも無理で、母にお願いしてまで払っていた保険です。あの男に解約金を持っていかれるなんて我慢できない。
そのことを先生に話すと、
「もっと早く言ってくれればいいのに……難しいかもしれないけど、やってみるね」
と言って下さいました。
難しい用語は私にはわからないので、私がわかるように書きますね。
まず、私側の弁護士さんが、私から聞いた話をまとめて、元夫を、次女親権と離婚の件で訴えたい旨、裁判所に書類を提出します。すると、そのコピーが元夫のところへ行き、元夫側から、反論の書類が裁判所に上がってくるのです。それが私側にコピーで送られてきます。その反論をまた弁護士さんに託す……という形で、裁判所で口頭弁論が数回行なわれます。その間、本人が参加しても構いませんし、私が取ったように、弁護士さんに任せる形でもいいようです。
最後の証人尋問だけは、出ていかなければならないのですが、そこで、裁判官が判断をし、別の日に判決が下されることになります。
この、第一審の判決に不服があった時には、2週間以内であれば控訴することができ、そこで再度たたかうことになります。その判決にも不服がある場合は上告……。
どこまで行くかわかりませんよ、覚悟して臨んで下さい。そう言われました。
初回の口頭弁論を終えて、先生に弁護士事務所へ来てくださいと言われ、行きます。
「あの人は、おかしいにも程がある。弁護士もつけない上に、裁判官に詰め寄って、『変な判決出して見やがれ、お前を訴えるからな』って言うんだよ。君、あんな人とよく一緒にいたね?すぐにでも別れなきゃならない。あんなのと一緒にいたら病気だって治るはずがない。慰謝料、養育費云々、もう言ってる場合じゃないよ。とにかくすぐ離婚できるようにしよう!」
先生が、怒ったようにそう言いました。
私は、先生に申しわけないと思いました。裁判官にも申しわけないと思いました。私のせいではなかったのに……。
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